<朝の風景>

「(ガチャ)おい、起きない気か。」
「……………。(もぞ)……………私は吸血鬼だ。」
「あぁ?」
「昼に起きていたのは、息子たちに合わせていたからだ。その息子たちがいないのに、昼型の生活をする意味はない。
 帰ってくるまでは昔のように日中は眠り、夜に活動する。」
「………ああ、そうかい。例の筋肉厨房係が朝食を用意していたが、それもいいのか。」
「元より、人間の食事は吸収できん。息子たちがいたから一緒に食べていただけで、特に必要な訳でもない。一人で食べたところで、無駄なだけだ。」
「………全く……あいつらがいなくなっただけですっかり腑抜けになりやがって……。
 まぁ、俺には関係ないがな。一応、厨房係にはそう伝えておいてやるよ。じゃあな。」
「……待て。お前は食べるのか、ディエゴ。」
「当たり前だろ。ジョッキーは身体が資本だ。規則正しい生活と栄養バランスは基本中の基本。
 第一、もう二人分用意してあるんだ。俺まで食べないと丸ごと無駄になるだろ。」
「……………………。」
「……用がないなら、もう俺は行くからな。」(ガチャ)
「待て。………やはり、私も食べる。」(のそり)
「……無駄なだけなんじゃなかったのか?」
「無駄で、無意味ではあるが、しかしお前一人で食べるのも味気ないだろうからな。付き合ってやる。
 それに、子供たちが帰ってきたときに生活リズムをまた元に戻すのも面倒だ。」
「……やれやれ………面倒臭い奴。」



(さびしがり帝王と、付き合ってやるジョッキー)









<人形>

「ひらめいた。」
「唐突だな。聞きたくないがどうした。」
「以前、息子たちが私の姿を模した人形をいじっていた際、その動きや感覚が私の身体にも伝わってきたことがあってな。二回ほど。」(※<針供養><フィギュア>参照)
「恐ろしい話だな。」
「ああ。だが、これを応用できれば……例えばドナテロの人形を用意してそれを動かすことで、離れた場所にいるドナテロの動きを操ることができるかもしれん。」
「……一日二日離れただけでもう息子を傀儡化する気か。つくづく精神が病んでいるな。」
「違う!!全ては、ドナテロの命を救うためだ!」
「はぁ?」
「つまりッ!ドナテロが車で血の槍に飛び込み殺されるその寸前に、私がここでドナテロと魂をリンクさせた人形を思い切り投げ飛ばすなりしてしまえば、ドナテロの身体も車から吹っ飛び、プッチと弟の戦いの場から強制的に離脱することができる……。結果、死の運命から逃れられるということだッ!!」
「おいッ!!そんな世界の運命(=物語の流れ)を変えるような真似して大丈夫なのか!?」
「知るか!!息子の無事に比べれば、運命や天国など知ったことではないッ!」
「オイ天国発案者!?」
「それに、ドナテロ一人が死の運命から再起不能に変わった所で、物語に大した影響などない……。」
「……悲しいこと言ってやるなよ……。」
「私の息子だというのに、何故ああも不遇なのか……お陰で超像可動どころかフィギュア化もされていない。私もハルノもプッチも二種以上出ているというのに。」
「立ち位置的にはSBRのディ・ス・コ程度だからな……。
 それで、そんな状態でどうやって人形なんか用意するんだ。自作する気か?」
「フッ、問題ない。この館には、人形作りのプロがいるのだ。元々私に影響を与えた人形を作ったのも2度とも奴の仕業……効果は実証済みだ。
 テレンス!テレンスーーー!!」(パン、パン!)


 ……………シィ……ン……………


「…………?…………ハッ!!」
「……?」
「しまった……テレンスは昨日から有給をとっていたのだった……。」
「有給取れるのか、ここ。」
「アイスやヌケサクなどは滅多に取らんがな。だがテレンスはいつも春と夏と冬に、何故か3,4日続けて休みをとるのだ。なんでも、コミ………なんとかという、祭りだか市場だかに出るらしいが。」
「ふぅん。
 まぁ、仮に人形が用意できたとしても、ヴェルサスが死ぬタイミングとか吹っ飛ばす方向とか力加減とか、計画に色々と無理がありすぎる。諦めろ。」
「WRY………。」(しゅん)



(もうDIO様が直接プッチ制止しに行った方が早くて確実な気が…)









<特性>

「……普通に、鏡にも映るんだな。」
「ん?何だって?」
「いや、何でもない。そうだ、銀細工とかは平気なのか。」
「銀?どちらかといえば金製の方が好みだが、まぁ銀も嫌いでもないな。急にどうしたんだ?」
「別に、大したことじゃない。それと、生首状態で長期間生きていられたことがあると聞いたんだが、本当なのか?具体的にはどのくらい?」
「ああ、あれか。ウィンドナイツで別れてから、新婚のジョジョと船で再会するまでだから……大体二か月ほどか。
 だが、あれはなかなかに大変だった……ワンチェンがいなければ、生活さえままならなかっただろう。あの時はあれが最善の方法と考えてやったのだが、正直もうやりたくはないな。」
「てことは、自力で切り落としたのか。ふむ……てことは、『首を落とせば死ぬ』という話も当てはまりそうにないな。」
「………ん?」
「胴体なしで生きていられたということは『心臓に木の杭を打ち込まれると死ぬ』ってのも無効そうだし……ああ、だが館ごと火を放たれて胴を貫かれながら焼かれた時は、大分ダメージを負ったらしいな。ということは、『炎が効く』というのは一応当てはまるわけだ。ま、一番簡単で確実に殺せるのはやはり太陽光だろうが。」
「………………ディエゴ………お前な………。」



(「ハルノの時(<弱点>)と比べてなんと可愛げのない……。」)









<久しぶりに>(DIOのみ)

「………………静かなものだな。」

 パラリ……

「こうして何にも邪魔されずに本を読むというのも、随分久しい気がするな。普段は、喧嘩だの騒音だのとやかましくて………。」

 パラリ……

「ディエゴも昼間は出かけているし…。全く、やはり日中に起きるものではないな。」

 パラ……

「………そういえば………この独り言というのも、最近はほとんどなかったな。
 普段なら、一言呟けば……何かしら返事があった……。」

 ………………パタム。

「……いかんな。本に集中できん。
 そうだ、久々に日記でも書くとするか。天国計画を実行中の今では手記としては無意味だが、まぁ暇つぶしにはなるだろう。
 ええと、ノートは…………お、あった。」

 バサッ。パラリ……。

「………………………………。
 …………なんということだ………。私も末期だな。」

 ……パタン。

「書くことが、何も思い浮かばんとは…………。
 はぁ…………。」



「…………早く、帰って来ないものか……。」



(さびしがり帝王その2。その寂しさも、普段の『当たり前』があるからこそ)









<メッセージ>

プルルルルルルル…………プルルルルルルルル…………

「………?何の音…………ああ、あれか。
 多分、電話……なんだろうな。妙な音だが……。誰も取らないようだが………。」

プルルルルルルル…………プルルルルルルルル…………

「……………面倒だな。無視するか。」

プルルルルルルル…………プルルルルルルルル………………プツッ。

『……ディオ・ブランドーだ。用件のある者は発信音の後に………』
『(ブフッ)うっわ、スッゲェェーーッ!リキエルおい、留守電親父の声だよ!初めて知った!どんな顔して吹き込んだんだwww』

「ッ!ウンガロの声……?(ガチャッ)もしもし、ウンガロ?」
『あっ、よかった出た!やーよかった、携帯かけても全然出ねぇからどうしたかと思ったぜ。
 つーか留守電!親父いつの間にあんなの録ってたんだよ!ウケるwオレらのいない間か?」
「……………さぁな。悪かったな、あいつじゃなくて。」
『え?………あ、あれ、もしかしてディエゴ?うわ、悪ぃ悪ぃ、声似てたからつい。』
「あいつの方がよっぽど低い声だろうが……くそ、何の用だ。
 全員そっちに揃ってるのか。仕事だか何だかはもう終わったんじゃないのか?今どこにいるんだ。」
『……すげー、なんか親父より父親っぽい台詞……あっちょっ、切るなよォーー!悪かったって、そんな怒んなよォ〜。
 いや、それがさぁ………。』



「おかしい………。一巡予定日はとうに過ぎたというのに、まだ息子たちが帰ってこない……。
 まさか、交通事故……!……は、予定の内だったか。ドナテロとリキエルが。では、いったい何が……………。
 む、ディエゴ……電話か?誰からだったんだ?」
「……あー………それが……。
 ウンガロから……なんか、6部完結記念のお疲れ会だか打ち上げだかがあるらしくて、帰りは月末になる、と………。」
「何……だと……!?」



(SBRでも電話はよく出てくるよね)









<相違点>

「……違い……?………体格、とかか?」
「これはジョジョの肉体だからな。比べるのは首から上までだ。」
「……てことは、性格の不一致とかもノーカウントか……。
 ………瞳の色。」
「まあ、妥当だな。あとは、髪質とかな。」
「……?同じ金髪だろ?」
「お前の方が多少細くて、猫っ毛だ。それに私は元々ストレートだ。」
「そうなのか?俺はむしろ、大分マシになった方なんだがな。ガキの頃はいつも勝手に毛先が丸まって苦労した。」
「(……全自動コロネ……。)」
「何か今失礼なこと考えたろ。」
「いや別に。」



(普通に雑談できる程度には仲良くなった……かな?)









<かさぶた>

「……!ディエゴ、ちょっと待て。」
「ッ、何だ急に。手を離せ。」
「この手の傷は、どうしたのだ。」
「ああ、それか。別に大したことじゃない、少し切っただけだ。もう塞がってる。
 なんだ、そんなじろじろ見て。そんなに怪我が珍しいか?」
「…………まぁ、な。」
「おかしな奴だな。首にそんな目立つ傷があるくせに。」
「フフ。……本当に、これほど似ているというのに……やはり、お前は人間なのだなぁ……。」
「……?何当たり前のこと言っていやがる。気色悪い。………(カリ)痛ッ。
 ッおい!どさくさにまぎれて剥がそうとしてるんじゃあないッ!このッ、お前の首の傷跡も引っぺがしてやろうか!?」
「よさんか!やっと大分馴染んだというのに!」



(怪我と無縁のDIO様。別に人間に戻りたいとかじゃ全然ないけど、ちょっとかさぶたが懐かし羨ましかった御様子)









<使い方>

「だから言っているだろうディエゴ!何もかも使い捨てるのではなく、後々のことまで考えて長く使えと!」
「フン、俺が何をどう扱おうと俺の勝手だろう。
 第一、いくらでも替えがきくのになんでわざわざ後のことまで考えないといけないんだ。」
「お前や私の生きていた頃はともかく、今はエコの時代なのだ。限りある資源を有効に活用するのは当然のことだろう。いくら簡単に予備が用意できるといっても、無限ではないのだからな。」
「自称帝王にしては随分とみみっちい考え方をするんだなァ。自分以外の周囲のことなど、お前や俺が気にするような人間か?おっと、お前は人間じゃなかったな。」
「……別に、周囲環境の為だけに言っているのではない。使う側であるお前にとっても、一つのモノを長く使う事は有益なのだ。
 長く使えば、それだけ愛着も湧くし、扱い方も慣れてくる。そして使われる方も、次第にこちらの信頼に応えようとして変化していく。そういうものなのだ。」
「変化……?そんなものは必要ない。俺が期待する役割を果たしてくれれば、それで十分だろう。向上も成長も、俺にとっては無駄なものだな。
 それに、お前のように使えないモノまで後生大事に手元に置いておくのもいかがなものかと思うがな。年をとるとモノが捨てられなくなるってのは本当だったんだな。」
「……貴様……。」
「ついでに言わせてもらえば、お前愛着どころか半分ヤンデレみたいになってるモノまでいるだろうが。あんな状態になってまで側に置き続けるなんて、よほどのアホかマゾかのどっちかじゃあないか?」
「ええいッこのDIOが親切心から言ってやれば、いい気になりよって!
 いいか、貴様のように手を組んだ人間片っ端から死なせるようなやり方は、絶対に非効率だッ!」
「ハッ、片っ端から適当に扱う上に誰にでもいい顔する八方美人が。帝王が聞いて呆れるぜ。」


「…………これはもう、オー人事に連絡していいレベルなのでは……。」
「有休帰りが何言ってやがる、テレンス。ちょっと社畜どころか消耗品扱いされた程度じゃハラスメントとは言えねぇよ。」



(半ヤンデレ=ヴァニラ。使えないのに手元に置いておく=ヌケサ(略))










<間柄>

「そういえば、昨晩ウェカピポとかいう男に声をかけられたぞ。」
「ウェカピポ?なんでまた。」
「どうやら、お前と間違えたらしい。距離があった上に夜だったからな。
 『ディオ』と呼ぶので立ち止まったが、近づいてからえらく動揺された。」
「……まあ、無理もない。俺だと思って近づいてみてこんな大男が待ち構えていたら、そりゃ驚きもするだろう。」
「それで、そいつからお前と私の関係を尋ねられてな。一応『遠方に住んでいて最近一緒に暮らすようになった親類』ということにしておいたから、お前も万一尋ねられたらそれで合わせるように。」
「……親類……ねぇ。具体的には何と答えたんだ。」

「……………………。」

「うおおおおおいッ!!無理がありすぎるだろこの120歳オーバー!」(バンッ)
「仕方がなかろう、事情を知らない者に一から私とお前の関係を説明するのは困難だし面倒だ。(ぷい)
 それに、肉体年齢は人間止めた時の21歳で止まっているのだから十分セーフの領域だろう!」
「こんなゴツでかい21歳がいるかァァァーーーーッ!!!」(KUUAAAAAAAッ)



(身体の元の持ち主(ジョナサン)も21歳だったから、さ……)









<土産>

「父さーん!ただいまー!!(バタバタバタ)
 ごめんな、帰るの遅くなって。あ、これお土産!グリーンドルフィン刑務所の新名物、ワニの人形焼き!」
「リキエルそれ、徐倫たちに押し付けられたもんだろぉ〜?
 オレのはちゃんと選んできたんだぜ、親父。ほら、これ!『マイマイ型キャンディ』!虹が見えるほどの美味さ、って評判なんだと。期間限定でマイマイカブリ型チョコレートもセットなんだぜェ?」
「相ッ変わらずラリったモン買ってくるな、全くよォォォ。それに比べて、俺のは自信あるぜ。なんたって味も保証済みだしなァ……。
 見ろよ、親父!オーランド病院限定販売、『病院食スナック』!それも、激レア『白身魚とアスパラとカニ肉のプリン蒸し味』だぜ!?」
「ヴェルサス……あなた、そんな地雷としか思えない商品よく見つけて買ってこられましたね……。
 やはりお土産物の定番と言えばチョコクランチかサブレでしょう。ということで僕からはこれ、『一巡サブレ』です。表面には焼き模様として、最終戦でウェザー・リポートのスタンドに押しつぶされる瞬間のプッチ神父の顔が印刷されて……。」
「うわああああああああ!神父様ァァァァッ!?」
「そっちこそどこで見つけてきたんだッそんなえげつねぇもん!!」
「ゲェェーーッ、兄貴悪趣味ーーーッ!普通の奴に渡してもヒくのに、なんでわざわざ神父と親友の親父に渡すんだよ!!」
「親友だからこそ、その親友が商品化されたというならば一度はチェックしておきたいと思うのが普通でしょう。」
「ないわー……。オレが親父なら絶対兄貴最下位だわ。やっぱ一番真っ当なのはオレだな。」
「ザケんなウンガロ!そんなアブねえ飴買ってきた奴のどこが真っ当なんだよ!No.1は俺だッ!!」
「いーや、俺だって!!」

 ぎゃー!ぎゃーー!!


「………ほら、呼んでるぜ。とっとと行って受け取ってやれよ、『お父さん』。」
「…………『皆無事に帰ってきてくれたことこそが、一番の土産だ』………とか言ってうやむやにするのでは駄目だろうか……。」



(バレンタインの悪夢再び?とりあえず息子帰還オメ)









    


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 番外編:吸血鬼とジョッキーのぎこちない日常。