<ハンドケア>
「夏の間はUVカットが主だったが、これからの季節は特に保湿が重要だ。冬に近づくにつれて乾燥した日が多くなるし、吸血鬼や柱の男ならともかく人間の肌は年齢と共に水分を保持しづらくなっていく。
最近だと、使いやすいのはやはりニベアだな。価格も手ごろだし、寝る前に塗っておくだけで結構違う。カーズの場合も店の給仕で水仕事が多いだろう。大丈夫だとは思うが、一つ用意しておくといい。青缶なら安いし、量も多いから店員4人全員で使える。」
「よし、覚えておこう。」
「ああ。
それとディアボロ。さっき君が言っていた指先のささくれの原因も乾燥だ。それからタンパク質とビタミン不足。ハンドクリームのほかに、食事にも気を使ってみるといい。鶏ササミなんか高タンパク低脂肪だよ。」
「なるほど、タンパク質とビタミンか‥‥。よし、カーズ。哮鴫(ティエンチー)一皿追加で。」
「よしよろこんでェェィッ!」
「‥‥確かにそれも高タンパクだそうだが、カエルの丸焼きはよしなさい。というか、あるのか。なんでもあるなこの店。
あと、DIO。前から言いたかったが、その色のマニキュアはやめなさい。」
「何故だ!!このDIOに似合いの色だとは思わんのか!?」
「紫は服との合わせ方が難しいんだよ‥‥。しかもそんな濃い色、君のその黄色のジャケットでは明らかに爪だけ浮いて見える。
どうしても紫がつけたいなら、せめてもう少し淡い色にしなさい。最初にベースコートを塗って、一度じゃなくて二度塗りか三度塗りすれば、薄い色でもちゃんと映えるようになる。もっと目立たせたいのなら、爪先にラメを少し入れるのもいい。」
「ムウ‥‥‥考えておこう。
そうだ、吉良。ネイルアートというのはどうするものなのだ?あれなら、地味な色でも色々と工夫が出来るのだろう。」
「うーん‥‥君やカーズみたいなのはいかにも散々凝った挙句やりすぎそうな気がするんだが‥‥簡単なものなら、市販のテープやストーンを使ったりして‥‥。」
わいの、わいの‥‥
「‥‥‥‥‥同じテーブルにいるはずなのに、この疎外感はどういうことなんだ。」(ポツー‥‥ン)
「吉良の野郎まで加わるとは‥‥つーかあいつはカマ共の手首も守備範囲内なのか。」
「いや、性癖や好みとは違う次元でアドバイスしているようだけど‥‥。
というか吉良、いくら専門分野だからって詳しすぎるだろう。ベッド下に潜む殺人鬼のくせして、これ下手するとそこらの女性よりよほど女子力高いんじゃないのかい。」
「‥‥駄目だ徐倫なんか戦う前から負けている‥‥。あいつが今磨きをかけてるのは戦闘力ばっかりだ‥‥。」(ガクリ)
「ああ‥‥この間の祭りでまさに血祭りにされたんだってね、君。」
(またもタイトルにないけど都市伝説シリーズ。女子力ほとばしるラスボス達と自業自得な父親)
<衝動>
am2:00
(‥‥‥‥‥‥イチジクのタルトが食べたい。)
(こういう深夜の唐突な食欲というのは厄介だ‥‥。人間だった頃はこんなことはなかったのだが。)
(‥‥アイスを呼んで作らせるか?どうせ奴なら呼べば起きるだろう‥‥。
んん‥‥だが奴は料理の腕前はなかなかに上げてはいるようだが、菓子の方はまだそれほど良いとまでは言えない‥‥。)
(朝まで待ってケーキ屋に買いに行かせ‥‥いや、駄目だ。今がいい。今食べたい。)
(イチジク自体は、確か冷蔵庫にある‥‥。旬だからとプッチが先日送ってくれたものが。)
(血の渇きは最近さほど感じなくなったというのに‥‥そもそも私に人間の食事は本来必要ないというのに‥‥。)
(ああ、食べたい。大量のカスタードクリームの上に、旬の甘くなったイチジクをみっしり敷き詰めたタルトが食べたい‥‥。)
(‥‥‥‥‥‥。)
「よし、作るか。」ムクゥッ。
〜1時間後〜
「ンッン〜♪そろそろ焼き上がりか‥‥。
調理自体は時止めやザ・ワールドの精密動作で時間短縮できても、焼く時間だけはどうにもならんからな‥‥。とはいえ、この待つ時間も菓子作りの醍醐味の一つだろう。
よし、そろそろ皿の準備を‥‥‥(ガタン)‥‥‥ム?」
ギィ‥‥
「あれ、父さん。起きてたのか。」
「ヌゥッ、リキエル‥‥お前達、皆揃って‥‥こんな時間に何を。」
「そりゃこっちの台詞だろ。今何時だと思ってんだ、3時だぜ?
菓子焼くなら12時間ほどズレてんじゃねーかァ?‥‥お、タルトじゃねーか。」
「ちょうど皆、兄貴の部屋に集まっててさ。」
「こんな時間に食ったら太るぜぇ〜?親父。あ、吸血鬼だからいいのか。
まーとりあえず皿とフォーク出そうぜ。」
「‥‥ちょっと待て、お前達も食べる気か?」
「一人占めは良くないですよ、父さん。あ、ポットとサイフォン出しますね。父さんは紅茶でいいですよね?」
「あ、オレコーヒーがいいー。」
「いや、一人占めという訳では‥‥。」
(ガチャッ)「うーむ‥‥(クン)これはコーヒーだ、コーヒーと、タルトの香りがする。」
「‥‥ディエゴ、貴様までか。
ああもう、しょうがない‥‥。食べたら歯を磨くのだぞ。」
「「「「はーい。」」」」
(なし崩しに、真夜中三時のお茶会へ突入)
<秋の夜長>
「秋の夜長、って言うけどよォォ‥‥一番長いのは冬の冬至なんだろ?
なんだってわざわざ途中の部分を強調してるんだよ?半端な真似しやがって、全くよォォォ。」
「変ないちゃもんつけるなぁ、ヴェルサスは。
うーん‥‥ほら、秋は、毎日徐々に夜が長くなってく、っていうイメージが強いんじゃないか?日が落ちるのも早く感じるし。」
「単に、冬だと寒くて起きてなんかいられねーからじゃねーのォ?」
「‥‥元々は江戸時代の時間の計算方法だと、秋が最も夜が長くなることから‥‥というか貴方達、何故わざわざ僕の部屋に集まるんですか。しかも3人揃って。」
「そりゃ、兄貴が一番宵っ張りだからだろ。毎晩遅くまで起きやがって、不良ギャング。」
「放っておいてください、僕のは仕事です。
第一ヴェルサスこそ普段早く寝すぎなんですよ。その年代で何故11時にはもう床についてるんですか。過度な睡眠は無駄ですよ。」
「うるせーなぁぁぁ、それこそ俺の勝手だろ?その分早く起きてんだから無駄じゃねーよ、大体俺だって昔はこんな早寝じゃ‥‥。」
「言ってやるなよ、兄貴‥‥ヴェルサスは今ちっとでも身長伸ばしてーんだよ。
何とかして一ミリでも身長変えて、『神父と全く同じ身長体重』って特徴をなくそうと頑張ってんだからさぁぁー。」
「おいッ!!ウンガロテメェなんで知っ‥‥!!」
「ヴェルサス‥‥それは、すみませんでした。けど、流石に25で成長期はもう‥‥。」
「うるッせエェェーーーほっとけェッ!!」
「足首とかでよければ、新しくサイズ違いを創って取り替えましょうか?」
「するかッ!!靴感覚で勧めんじゃねぇよ!!」
「親父も首から下チェンジでビルドアップしたしなぁー。
つーか、大声出すなよヴェルサス、親父もう寝てる頃だろうし。」
「吸血鬼で夜行性の父さんが寝てて、人間の俺達が起きてるってのも変な話だよな。兄貴も早く寝ろよ。」
「だから僕は仕事が‥‥‥ん?
今、何か‥‥物音がしませんでしたか?」
「あん?‥‥‥(クン)‥‥なんか、甘ぇー匂いがするな。ヴァニラが明日の仕込みでもしてんのかァ?にしては、バターに、砂糖の香り‥‥。
‥‥‥ちょっと俺、厨房見てくるわ。」
「あ、なら僕も行きます。一息いれるついでにコーヒーが飲みたい。」
「あ、オレもオレもー。」
「えー、皆行くのかよ‥‥じゃあ俺も。」
(以下、<衝動>からのお茶会へ続く)
<メリーさん>
とぅるるるるるん、とぅるるるるるん‥‥‥ガチャッ。
「もしもし?」
『もしもし?わたし、メリー。』
「メリー‥‥?」
『これから、あなたのところへ行くね。』
「‥‥そうか、わかった。伝えておくよ。(ガチャンッ)
おーい、DIOー?なんかメリーって女が今から来るってさ。お前の部下だろう?」
「んん?メリー、だと?はて‥‥そんな名の配下はいただろうか‥‥。
というかディエゴ、貴様私の部下さほど覚えていないのだからそうさっさと切るな。次からテレンスかアイス‥‥いや、テレンスにつなげ。」
「はいはい。」
とぅるるるるん、とぅるるるるるん‥‥‥ガチャッ。
「はい、もしもし?」
『もしもし、わたし、メリー。』
「ああ、さっきの奴か。ちょっと待て、今執事に‥‥。」
『‥‥今、あなたの館の前にい‥‥‥。』
「キュェィィィィーーーーーッ!!」
ビシビシビシッ、ビギギッ、キキィィーーンッ!!パキィィーーンッ!!
「ッ!?なんだ、何事だ!?」
「ああ‥‥ペット・ショップが何か見つけたようだな。気にするな、侵入者や不審者の排除は奴の仕事だ。」
「そ、そうか‥‥。‥‥‥ん?おい、もしもし?」
(ツー、ツー、ツー‥‥)
「‥‥‥‥切れてる‥‥まあ、いいか。」
(優秀な番鳥に敬意を表すると同時に、哀れなメリーさんへ合掌)
<山小屋の五人目>
「なぁ‥‥スクエアって知ってるか?
部屋の四隅に4人が一人ずつ座って、順番に壁沿いに歩いて隣の角の奴の肩を叩いて、ぐるぐる回る‥‥ってやつ。」
「ああ、あの‥‥本来なら5人いないと成立しない、という怪談のやつですね。」
「部屋が三角形でも成立すんじゃねぇ?」
「身も蓋もねぇなウンガロ‥‥つか、最初に『四隅』って言ってんだろ。
で?リキエル、それがどうしたんだよ?」
「うん。あれってさ、降霊術の一つとしても使われてるんだって。
こっくりさんみたく、何回か成功するまで繰り返すことで、霊を呼び寄せることが出来るんだって。」
「‥‥へー‥‥‥。」
「‥‥‥霊って言やあ‥‥そういや、結局今年の盆も来なかったよな。
オレらの、ばーさんっていうか‥‥‥親父の‥‥母親。」
「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」」」」
(20分後、DIOの部屋にて)
「(ガチャッ)おいDIO?」
「んん?ディエゴか、どうした?」
「さっき向こうの部屋でジョルノ達が、明かりを全部消したまま壁沿いに一人ずつ歩いて、一周したらまたやり直し‥‥っていう遊びを繰り返しやっているのを目撃したんだが、あれは止めるべき類のやつか?」
「考えんでもわかるレベルだろうそれはッ!!何を悠長に聞きに来ている貴様ッ!!
ええいッあの子達はまた訳のわからん危険そうな遊びをォッ!!!」
(おばあちゃんが気になるお年頃)
<ひとりかくれんぼ>
「俺の仕事用の人形の腹ン中に生米と赤い糸詰めて風呂に沈めやがった奴はどいつだァァァァァーーーーッ!!!」
「落ち着きなさいデーボ!
館の中でやられたのであれば犯人は十中八九DIO様のご子息方の誰かです!すなわち、訴えても無駄な事です!
下手に手を出せば粛清されるのは貴方の方ですよ!?」
「ううううう‥‥!ウラミハラサデオクベキカァ‥‥‥。」(泣)
「わかっています、人形を傷つけられる悲しみは私にだって理解できます。‥‥DIO様には、私の方からも進言しておきますから‥‥。」
こそ、こそ‥‥
「やべー、バレてる‥‥。」
「テレンスの人形使ったら絶対キレて肋骨折れるまで蹴られると思って別の人形使ったのになー。」
「しかもテレンスさんの自作人形だと、霊絡み以外の怪奇現象が起こる可能性が高いですしね。」
「手頃だと思ったのになぁ‥‥呪いの人形。しゃーねぇ、次の手段探すか。」
(駄目な方に好奇心旺盛&行動力ある息子達)
<洗面器>
「降霊ってよりも、未来予知の類だけどよぉー。
深夜0時にカミソリをくわえて、水を張った洗面器を覗き込むと、将来の結婚相手が映っ‥‥‥」
「馬ッ鹿ウンガロテメェ死にてぇのか絶対よせ!!」
「命が惜しくないのか死んでもやるなよ俺は止めたからな!?」
「えっちょっ、何なに!?
え、これそんな危険なやつだっけ!?確かオチも、うっかりくわえたカミソリ落して、結婚相手の顔に傷がついた、って程度の話だったと思ったけど‥‥。」
「だから‥‥だからよォォ、ウンガロ‥‥‥万が一にも‥‥!
‥‥‥何も映らなかったら、どうするんだよ‥‥!」(震え声)
「予知とか予言の類が、なんで『100%ゼッタイ』かわかってるのか‥‥?
未来予知ってのは、それを知った時点で、未来が確定して、変えられなくなるんだぞ‥‥!?」(涙声)
「‥‥‥ごめん‥‥‥ほんとごめん‥‥‥!!」(泣)
(絶望し、それでも未来を諦めたくないと泣き濡れる6部三人息子)
<降霊術>
「洗面器はともかくとして、何かに『映す』というのはこの世ならざる者を見るための手段としていいですよね。鏡であったり、水面であったり、あるいはビデオカメラのように、肉眼以外の物を通すことで見える世界が広がるということでしょうか。」
「‥‥兄貴こそ洗面器とカミソリで未来予知やればいいんだよな‥‥。例え映らなくても絶望しないし、どうせ映るだろうし‥‥畜生イケメン死ね。いっそ映った時点で口のカミソリ叩き落としてやりてぇ‥‥。」
「はいはい、腐らない腐らない。
とは言っても‥‥僕も、鏡関連の儀式なんてさほど知らないんですよね。せいぜい、お前は誰だって鏡に映る自分に尋ね続ける奴くらいしか。」
「それ確かナチスの拷問だよな?流石に精神崩壊はシャレになんねぇよ。」
「鏡の前でブラッディ・メアリーって三回唱えるやつはどうよ?血まみれの女が映るんだって。」
「あれって確か、非業の死を遂げた女学生とか、子供を殺した女とかが映るんじゃなかったっけ?ちょっとズレないか?
しかもあれ、アメリカで流行った都市伝説だぜ。イギリスの霊を呼ぶのならイギリスの伝承をやった方が良くないか?」
「えー?でも、イギリスの怪談なんか余計に知らねぇし、親父に聞いちゃバレちまうし‥‥‥あっ、なぁディエゴーー!」
「話は、大体聞こえていた。そしてお前らの目的もおおよそ理解した‥‥が。
お前ら、いい加減その向こう見ずな好奇心は抑えるべきだと思うぞ‥‥。」(げんなり)
「ええー?」
「えーじゃない。第一、不謹慎だろう。
せめて本気でやるなら、もっと正式な儀式にするとか‥‥。」
「だって、ガチなやつやって万一本気でなんか出てきたら怖えじゃん。」
「そんな半端な‥‥。」
「ところで、ディエゴ。ディエゴって確か、顔は母親似なんですよね?」
「‥‥‥?そうだが、急にどうした?」
「いえ‥‥確か父さんも、顔立ちは限りなく母親譲りのはずなんですよね。ダリオさんを見る限り。
で、父さんとディエゴがこれほど似てるという事は‥‥逆算して考えれば、父さんの母親とディエゴの母親も、非常に似た顔立ちをしている、ということになるな、と。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。(思案)
‥‥‥それで、鏡の儀式が何だって?
生憎と、イギリス発祥の怪談というのは今思いつかないが‥‥召喚や通信が目的なら、有名な奴だと、合わせ鏡はどうだ?」
「あー、深夜0時ちょうどに映すやつな。過去や未来が見えるとか、悪魔を呼び出す方法とかでも知られるけど、霊道が出来るとかいって幽霊にも適用されるらしいし、割といいかもな。」
「よし、そこで待ってろ。今鏡調達してきてやる。」
「よろしくー。」
(あっさり掌返して味方になるディエゴ)
<合わせ鏡>
「おい、テレンス。私の部屋にあった姿見をどこへやった?」
「鏡、ですか?いえ、私は存じませんが‥‥。ヌケサク、何か知ってますか?」
「ああー、それなら確か、さっきディエゴ様が借りてくって言って運んでましたぜ。」
「何、ディエゴが?一体何のために‥‥‥。」
ガッシャァァーーーンッ!!
――うわあああッ!!ヤベェッ!
――おいッ、何だよこれ!どーすんだよこれ!?
――落ち着けッリキエル!とにかく戻せ戻せ!今の音ぜってぇ親父に気付かれるッ!!
――戻ッ‥‥!?戻せるんですか!?これ!?
――知るかよ!いいから急げ!
「‥‥‥今の音と、声は‥‥‥。」
「‥‥‥ハァ‥‥またか。全くあの子らは本当に、目を離すと何をしでかすやらわからんな‥‥。
ああ、よい、私が見てくる。一応後始末というか、掃除の支度だけしておけ。」
「はっ、はい‥‥。」
「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」」」」(全員正座)
「‥‥‥‥‥‥‥で。
一体、何をしていたのだ。」
「‥‥‥あの‥‥いわゆる、合わせ鏡ってやつを‥‥。」
「ほほう‥‥成程。
で、『ソレ』は何だろうか。そこで二枚の鏡に挟まれ、押しつぶされるようにして倒れている‥‥その、ディアボロは。」
「‥‥‥‥‥0時ちょうどに鏡を向かい合わせたら、なんか、ニュッって、生えてくるみたいな感じで、突然‥‥。」
「多分‥‥『悪魔』だから‥‥かな?」
「流石に、僕らもこの展開は予想外だったもので‥‥咄嗟に、元の場所へ戻そうとして‥‥鏡を、こう‥‥ガッと‥‥。」
「‥‥‥‥そうか‥‥。」
(こそ、こそ‥‥)
「ディエゴ、逃げるな。貴様も座れ。説教だ。」
「‥‥KUAAA‥‥。」
(※巻き込まれた悪魔はその後、自力で復活して自力で歩いて帰りました。)
<ブラッディ・メアリー>
(全く‥‥ハルノたちにも困ったものだ。これまでも色々妙な遊びはしていたが、まさか今度は降霊術とは‥‥。
しかも、正規の手順を踏んだ儀式としてならともかく、半端な噂や与太話の域のものばかり‥‥。あれでは逆に危険だろうに。)
カツ、カツ、カツ‥‥
(しかもディエゴまで一緒になって‥‥まとめて説教していたせいでもうこんな時間か。
おまけに、それで呼び出そうと考えていたのが、よりにもよって‥‥。)
カツ、カツ、カツ‥‥ピタ。
「ん?
‥‥‥‥なんだ、鏡か。」
視界の端に鮮やかな金色が映った気がして、立ち止まった。
横を見れば、なんのことはない、それは鏡に映った私自身の姿だった。
廊下の片隅に、身の丈ほどの姿見が二つ並べられている。
(ああ‥‥ハルノ達が先程使っていた奴か‥‥こんなところに出しっぱなしにして。明日、ヌケサクにでも片付けさせるか。
‥‥‥そういえば、鏡と言えば‥‥。)
ふと、以前プッチから聞いた、アメリカで噂される鏡の怪談を思い出す。
鏡の前に立ち、一瞬迷った後、呟くように「その言葉」を口にした。
「‥‥‥Bloody Mary,Bloody Mary,Bloody Mary.」
シィィーーーーー‥‥‥ン‥‥
(‥‥‥何も映らんか。当然だな。
‥‥そもそも、映るはずがない。あの伝承で現れるのは女学生や、『我が子を亡くした母親の霊』だ。
決して『我が子を残して死んだ母親』ではない‥‥。)
我ながら、馬鹿げたことをしている。これでは今しがた叱った息子たちをとやかく言えない。
ため息をついて、くるり、と鏡に背を向けた。
「‥‥フン、くだらんな。
さて、いい加減夜も更けた。私もそろそろ寝るとするかな。」
『おやすみなさい、ディオ。』
「ああ、おやす‥‥‥‥‥ッ!!?」
理解したのは一瞬後。驚愕と共に、勢いよく振り返る。
だが、そこには何もない。二枚の鏡も、ただ闇を映すばかり。
だが、今の声は。
耳に馴染んだ、未だ忘れることのない、あの優しい声は。
気がついた。今鏡に映るのは、深い闇と、暗くぼやけた私の姿。灯りもない深夜では当然のことだ。
ならば、最初に目に止まった、あの「鮮やかな金髪」は?
「‥‥‥‥‥気のせい、か‥‥‥?
‥‥‥いや‥‥‥。」
(秋の夜、丑三つ時、一瞬の邂逅)
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季節は既に秋ですが「都市伝説シリーズ」継続→からの完結!
そして、無駄家族+1(ディエゴ参戦より)200ネタ達成!