<争奪>
「返せ。」
「返さん。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「あーあ……ったく、親父もディエゴもよく飽きねぇよな。
せっかく久々に帰ってきたんだし、もーちょっと仲良くすりゃあいいのによぉ〜。」
「まぁ、いいじゃないですか。多分父さんもあれで喜んでいるんですよ。」
「そうか…?俺にはマジギレに見えるけど…。」
「よいか……!?結局死んだことも、小娘に出し抜かれたことも別に責めるつもりはない!だがッ、家を飛び出したときに持っていった、私のザ・ワールドだけは返してもらおう!!」
「借りた覚えも、返す理由も俺にはないな。」
「貴様出ていく時確かに『借りてくぞ』って言っただろうがッ!」
「ふっ、馬鹿が……お前、俺が誰だか判ってないようだな。
今の俺は、今までの俺ではないッ!この俺は隣の世界の『元々ザ・ワールドを自らのスタンドに持つディエゴ・ブランドー』、いわばニュー・ディエゴなんだよ!つまりこのザ・ワールドも、当然元々俺の物!返す必要なんかないってことだ!!」
「そんな理屈が通るかァァッ!!第一ニューディエゴだかサンディエゴだか知らんが、お前未だに恐竜化のスタンド持ってるらしいではないか!あれはどうしたんだ!」
「いや、それはほら……元々使えていたものが急に使えない設定になるってのも微妙だし。」
「そんな理由でか!?能力は一人につきひとつという原則を知らんのか!?」
「お前だってスタンドの他に吸血鬼の能力があるだろ!人のこと言えた義理か!?」
「うぬうううう、ああ言えばこう言う……。
…ザ・ワールド!貴様も貴様だ!このDIOという主人がいながら、ディエゴなんぞにほいほい従うとはどういうことだ!体格もすっかり貧弱になりよって!ええいッ何だこの膝の『D』は!私がやったハートはどうした!」
「ハッ!あんなダサいもん俺のスタンドに何時までも付けていられるわけがないだろ!?
ザ・ワールドだって、自分の体に14の変な単語刻みこむような電波な主人なんかよりも、俺についていた方が幸せなんだよ!」
「黙れィッ!!大体貴様こそ、掲げるとか持ち上げるくらいならまだしも、スタンドと肩車とかどんだけベタベタしているのだッ!スタンドと本体の距離感(=射程距離)というものをもっと考えろ、この破廉恥がッ!」
「はぁ〜〜?胸に手ぇ突っ込んで心臓マッサージとかが当たり前のこのご時世に、ハレンチだぁ〜?よっぽど脳味噌が古くなってるか、さもなきゃスタンドに相当嫌われてるんだな。
近距離パワー型のくせに10Mの射程距離とかおかしいと思ったんだよ。どうやら心の距離感の表れだったようだな。精神の具現化と疎遠とか、笑わせるぜ。」
「何だと……ッ!!」
……しくしく、しくしくしく………。
「………親父ー。いい加減やめてやれよ、ザ・ワールド泣いちまったぜー。」
「うーん…これがあの伝説の『私のために争わないで』状態なのか…。乙女座り&両手で顔覆いとは、奥が深いな。」
「リキエル、感心するところじゃありません。まず精神のビジョンであるスタンドがひとりでに泣くというこの怪奇現象について解明しなくては。」
「兄貴も違ぇ。その前に親父とディエゴ止めようぜ。」
「ザ・ワールドーーー!貴様ッ、ここで泣くとか私はそんな女々しい奴に貴様を育てた覚えはないぞ!」
「いつ育てたんだよお前が!
フン、そりゃ泣きたくもなるだろう、折角こんな中世脳の時代遅れパワハラ野郎と別れることができたのに今更またより戻されそうになったらなぁ!」
「黙れディエゴ!貴様にザ・ワールドの何が分かる!」
(『ザ・ワールド』は、お前らにとって何なんだ。嫁か?)
<新生活>(無駄家族以外も出演)
「全く……あの前時代の遺物みたいな石頭野郎が……。ザ・ワールド泣かせたのだってそもそもあいつが……。」
「それはまた……色々大変だったんだな。それで、結局どっちのものになったんだい?あのスタンド。」
「ん…ああ。結局、普段はあいつがザ・ワールドで俺がスケアリー、有事の際には許可をとって借りていく、ということで決着が着いた。一応元の持ち主に敬意を評して、俺が最大限譲ってやったって形だな。」
「有事の際?」
「要するに、緊急事態の時だな。大統領に襲われたりとか、主人公……つまりお前と戦うことになったりした場合、ってことだ。ジョニィ・ジョースター。」
「え、君まだ殺り合う気なの?やだよ僕もう。」
「俺だってしばらくは御免だ。ったく………それにしても、まさか本当にあの家に戻ることになるとは思わなかった。
あれだけ派手に飛び出して、裏切って能力奪って逃げてきたってのに、普通こんな口論程度で済ませるか?一体どれだけ甘ちゃんなんだ、あいつら。」
「まぁ、君みたいなのを一度ならず二度までも受け入れてくれる辺り、よっぽど心の広い一家なんだろうけど。」
「何だとコラ。」
「基本こっちの人たちってそんなに飢えてないというか、精神に余裕があるんじゃないかい?
僕がこの間挨拶に行った貴族の家も、よそ者のはずの僕に対してなんかやたらと歓迎ムードだったし。確かに名字も一緒だし一応親戚的なものらしいけど、それにしたってあの寛大さ……。なんか、どことなく兄さんを彷彿とさせるような人だった。兄さんよりもっとマッチョだったけど。」
「ふぅん。
何にしても、あいつらの行動は理解できん。特にあの4人、血縁関係があるかどうかさえ確定してないってのに何故ああも俺に対して馴れ馴れしくできるのか…。」
「まあ、本意がわからないってのは不気味だよね。」
「いいじゃないか、二人共。新しい家族から受け入れてもらえなくて悩むというならともかく、受け入れてもらっているのを悩むなんて、少し贅沢なんじゃないか?
特にディエゴ、懐いてくれている相手に対して馴れ馴れしいはないだろう。折角新しく父親や弟ができたのならば、お前からも歩み寄っていかなければ。」
「あ、ホットパンツ。君も来てたんだ。」
「父って、だから血縁が……というか、弟の方もそもそも年下かどうかさえ微妙な相手で……。」
「弟分には違いないんだろう?
家族なら………弟、なら……大切にしないと。」
「……………ふん。
そういえば、お前は最近どうしていたんだ?その格好からして、まだ男のふりなんか続けているのか。」
「いや、これはオフの時だけだ。
今はまた、聖職に戻っている。丁度近くに教会があって、そこの神父様のところでお世話になっているんだ。妹思いの、優しい方だよ。」
「へえ。……そういや、アイツ……DIOにも神父の友人がいるって言ってたな。案外そいつだったりしてな。」
「ははは、まさか。」
「うおーい、お前ら折角来てんだから喋ってないで歌えよー!
おらジョニィ、デュエットやろうぜデュエット。つーかそこのディエゴ、お前さっきから一曲も歌ってないだろ。なんだ、実は音痴かぁ?」
「五月蝿い、パクリネタ野郎。お前は一人であの変なチーズの歌でも歌っていろ。」
「何だとオイッ!!誰がパクりだ誰が!確かに自分でもちょっとギリギリかとは思ったけど!
よぉーっし言ったからにはそこで耳かっぽじってよく聞けよ!?新作の三番までたっぷり聞かせてやるからよぉ〜っ!!」
「ていうかジャイロ、君いい加減マイク離せよ!さっきから歌ってるの君とティム(悲恋ソング限定)だけじゃないかッ!」
「(ガチャッ)スイませェん、ご注文のウーロンハイと唐揚げ、あとサービスの胃石お待たせ致しました〜。」
(カラオケ店『プレジデント』、レース参加者には割引クーポン券あり)
<フラグ回避>
「じゃ、次行きますよ。ケース4、第三部。」
「「「「「……………。」」」」」(ごくり)
「『皇帝』の銃弾が相手の額めがけて発射。相手は身をかわそうとしますが、そこへ背後の『吊られた男』が背中にナイフを突き立てる…。
深く刺さったナイフ、身をのけぞった相手の額に、『皇帝』の銃弾が命中ッ!」
「っしゃ!!やったッ!!」
「はい実は死んだフリッ!!反撃ッヴェルサス死亡ッ!!」
「うぎゃああああああ!!」
「……次、ケース5、同じく第三部。
『運命の車輪』が打ち出すガソリンの弾が確実に相手にダメージを負わせ、同時にガソリンを染み込ませていく。」
「「「「「………………。」」」」(ドキドキドキ)
「……接近してきた相手に対し、火種を放る。たちまち火だるまとなり、のたうち回る相手!
ここは乾燥地帯の真ん中、消火できる水もない!」
「よしッ!殺ったか!?」
「はいダウト!穴掘って地中に逃れた相手が背後から猛反撃ッウンガロ死亡ッ!!」
「あああ〜〜ッ!!!しまったあ〜ッ!!」
「……馬鹿だなぁ、ウンガロ…。火だるまくらい俺だってなったっての。そんくらいで勝利確信してられるかよ……。」
「うううう……。リキエル冷たい……。」
「次行きますよ。ケース6、第五部。」
「「「「「…………………。」」」」」
「ヘリの上にいた相手に、木の枝を蹴り上げる。生命を失った樹木は元の銃弾に戻り、勝利を確信した相手の頭上から……脳天を撃ち抜いた。」
「「「「ッ…………。」」」」
「……よく堪えましたね、皆さん。
…さて父さん、動かず、頭から血を滴らせ、脳髄に弾丸が貫通している相手に対し、何か言うことはありますか。」
「……死んだフリをしているな?」
「ベネ。見事です、父さん。どんなに瀕死のように見える相手でも、常に用心が必要です。
いいですか、敵サイドである皆さんが生き延びるためには、敗北フラグや死亡フラグを回避することが最重要です。その為にもまずはジョジョ界の代表フラグである『勝利宣言』を、いかなる優位な状況でも叫ばないよう訓練しなくてはならないのです!」
「……なあ、お前ら皆いつもこんなことやってるのか?」(ぼそっ)
「兄貴、俺らが来たばかりの時も無駄無駄の練習させようとしたしなあ…。」
「言ってやるな。ディエゴも死んで帰ってきたことだし、ハルノなりに気を遣っていてくれているのだ……多分。」
「さあ、どんどん行きますよ!ケース7、第二部。
相手のマントに手榴弾を引っ掛け、ピンを抜く。相手がそれを振り払うと、なんとその紐がマントの裏の大量の手榴弾に結ばれていた!たちまち大爆発を起こす相手!!」
「「「「「…………!」」」」」(グッ、と堪える)
「爆煙がやんだあとには、転がる腕、肉片、目玉。辺りには肉の焦げる臭い。」
「…………いくらなんでも死んだだろ?」
「はいディエゴダウトッ!実は相手は吸血鬼、肉片同士が繋がり再生し復活ッ!!」
「ちょっ、親父そんなことまでできんのか!?」
「いや無理無理無理無理無理無理ィィッ!!」
(脳みそも吹っ飛んだだろうに、スト様ったら頑丈だなぁ)
<二つ名>
「『邪悪の化身』『夜の帝王』『悪のカリスマ』………いいよなぁ、二つ名って。カッコいいよなー。」
「ああ、親父のな。……『夜の帝王』ってなんかドラクエのモンスターにもいた気がするけど。でもディエゴの『競馬界の貴公子』といい、やっぱ二つ名ってクールなのが多いよな〜。」
「なんだよウンガロ、つけたいのか?お前ならそうだな、『絶世の爬虫類』とかどうよ?」
「…………ならヴェルサスはやっぱ、『掘られたらヤバイ!男』だな。」
「あのアオリ文句は忘れろ!!俺はもっとこう………『幸せをつかみます』ヴェルサス、とか。あれ、選挙?」
「俺なら、『白きUMAの操り手』なんて感じかな。」
「あ、ちくしょう。リキエルのくせになんかカッコイイ。んじゃ兄貴の場合は……。」
「え、僕ですか?『イタリアギャングボス』じゃあ駄目なんですか?」
「肩書きじゃん。」
「無難に『黄金の風』かぁ?」
「サブタイだろそれも。むしろ『期待の新人』とか。あれ、選挙?」
「……『邪神コロネ』。」(ボソッ)
「「「おお!!」」」
「ちょっとディエゴ!?ヴェルサスたちも『それだ!』みたいな顔しないで!!違いますからね!」
(長男、最終鬼畜扱い)
<ピアス>
「…あれ?父さん、確かいつもピアスつけてたよな。」
「ああ、今は外しているが。それがどうかしたか?リキエル。」
「いや……ピアス穴が見当たらないから、変だなと思って…。」
「ん?塞がったんだろう。付け始めたのは海から引き上げられてからだからな。」
「………え?」
「だから、毎回付けるときはこのように…。」
ブチィッ。
ぐりぐり、ぐりぐり。
「……と、いちいち穴をあけなおさないといけない。
毎回血がつくから錆びるのも早いし、手入れが面倒だから大抵つけっ放しなんだが。」
「……ぴ、ピアス穴まで回復するんだ、吸血鬼って………。」
(吸血鬼の体質も地味に大変です。)
<グルメ談義>
「…………(パラリ)………お、旨そうだなこれ。」
「あ、ホントですね。いかにも脂が乗ってそうな。」
「ん〜、しかし脂は質が悪いと本当にしつこいからなぁ……。見ただけでは天然モノと養殖物の見分けはつきにくいし、三流品掴まされて喰うよりは、いっそ右のページのこっちくらいあっさりサッパリ系のほうが。」
「ええぇ〜ッ?右のって、流石にそこまで行くと物足りなさ過ぎません?盛りっつーか、そもそも肉の量が足りねぇっつーか。」
「そうか?なら……(パラパラ)ほら、ここの右のと左の、お前は喰うならどちらがいい?」
「え?……そ、そりゃー、やっぱ右の方かな〜……。」
「……要は肉々しいのがいいのだな。全く、分かりやすい奴め。」
「えーだってそりゃ男なら誰でもそうでしょう〜?…え、てことはまさか、DIO様は左のほうがお好みで?」
「何だその言い方は。そりゃ右もボリュームはあると思うが、左もなかなか捨てたものではないと思うぞ。何より肉の盛りが美しい。」
「やー、こんくらいの差なら、腹に入っちまえばどれも同じだと思いますけどねぇ…。同じ質なら腹持ちのいいほうが断然いいですよ、俺は。」
「ふん、風情のない奴め。………(パラリ)む、これは……。」
「ゲッ、ヒドいですね〜こりゃ。色は悪いわ年いってるわ、よくこんなマズそうなもんまで載せますね、この雑誌。」
「そういう需要もあるのだろうが……何よりこれは病気持ちだな。
見ろ、血管の一部が浮き上がっている。多分こういうのは中身もドロドロだぞ。味は無理すれば飲めんこともないが、あとで大概体調を悪くする。」
「お詳しいですね、DIO様。」
「……暗がりで捕まえてよく顔も確認しないまま咬み付くとロクなことにならん。お前も気をつけておけよ、ヌケサク。」
「はぁ…。まあ、DIO様はここ最近血液は全部家飲み(ボトル)ですし、その辺の心配はもう無用でしょう。」
「まぁな…。昔はこのような若い娘ばかり食したものだが、近頃はおちおち外食も出来ん。そうそう、先日の帰りは久々に………ハッ!!!(バッ、と振り返る)
ド……ドナテロ!?お前、いつから部屋にッ!?」
「親父…………。」
「ちち、ちがうぞ!?これはその、別にあのスケベな目的ではなくてだな……。」
「いいから……別にグラビア雑誌見てたことはもう構わねぇから、せめてそんなグルメ雑誌でも見てるかのような話しぶりだけはやめてくれ……ッ。」
(しかも盛り上がる相手がヌケサクとか)
<傷跡>
「……父さんの服って、首もとを隠すものが多いですよね。黄色ジャケットのインナーもですし、紐服も首だけは覆っているし……。やっぱり、その首の傷を隠すためですか?」
「ん……まあな。
この傷跡は……私がジョナサンに『勝利しきれなかった』証なのだ。生き残ったのは私だったが、それでも奴は因縁を残した。私は奴に、完全に勝つことはできなかった……いわばこれは、私が未だ不完全な証拠。
配下の殆どは、私のことを『完全なる存在』だと信じ、従っている。そんな奴らにこれをみせるというのは、私にとって恥にあたるのだ。
……『恥』だの『完全』だの、お前から見れば滑稽な話に聞こえるかもしれんな、ハルノ。」(フッ…)
「………父さん。」
「……………。」
「…………………でも、それだけこだわりがあっても脱ぐときは上半身裸なんですね。」
「え、だってエジプト暑いし。」
(シリアス雰囲気台無し)
<飲んだ夜>
ギギギギィ……。
「いらっしゃ……おや、ディオ様。」
「ワンチェン…すまんが、衣類用の消臭剤と口臭剤を頼めるか。」
「…………また飲んだ帰りですか。全く、先月といい毎度毎度……。」
「しっ、仕方がないだろう!私だって今晩は別に飲む気はなかったのだ!だが物事には、大抵不測の事態というものがあってだな……。」
「はいはい、存じておりますよ。奥から出してきますので、少々お待ちを。」
「急げよ。帰りが遅くなると、息子たちに心配をかける。
……下の子三人は、まぁ仕方ないよなと言って許してくれる気がするのだが、長男が問題でな。難しい年頃だし、匂いをプンプンさせて帰ると嫌な顔をされる気がする…。あとディエゴなんか、いかにも余計な詮索をしてきそうで嫌なのだ。全く、私にだって色々都合があると言うのに、こちらの気も知らんで……。」(ブツブツ)
「……あーもう、すっかり庶民のお父さんみたいなことを言うようになってしまわれて……。私は悲しいですよ、ディオ様。一度は世界を牛耳ろうとまでしたあなた様がこんな風では………あ、上着お預かりしますね。」
「ええい、貴様こそエンヤと同じようなことを言いよって。ほら。」(バサリ)
「あのクソ婆と同じとは聞き捨てなりま……!!…………おや。
ディオ様、あの……。」
「ん?」
「ここ、胸のあたりに……シミが。」
「何だとォッ!?どこにッ……あ、本当だ。
……ワンチェン、今からでもシミ抜き間に合いそうか?」
「難しいですねぇ……。こんな目立つ位置に、しかも赤では…。」
「おのれ、一張羅なのに……!」
「……昔と違って今は金持ちなんですから、いっそ買いなおしたらいかがです?」
「馬鹿者!これオーダーメイドなのだぞ!?突然作り直したりしたら何かあったことが息子たちにバレバレではないか!」
「……というか、以前『息子に隠し事は一切しない』とか仰ってませんでしたっけ?」
「ぐ。」
「全く………まあ、人間一人襲って返り血がたったこれ一箇所きりというのは流石ディオ様といった所ですが……。」
「お、襲ったと言うな!襲ってきたのはそっちの人間の方だ!」
「いやこんなにがっつり頂いてしまってからそのように言われても。」
「だ、だってなぁ……。未だに私に恨みを持つ者や私を倒そうとする者はいるし、館は警備が厳しいから外で襲われることもある。で、襲われたら当然殺すだろう?殺したら、その血がもったいないではないか!!
だが、その辺の事情を詳細に説明してあまり息子たちに心配を掛けたくもない…。リキエルあたり下手したら『俺も戦う』とか言い出しかねん。だからといって血みどろの格好のまま帰ったらハルノとか完全に私が外で悪事を犯して帰ってきたと思うではないかッ!!
あああもう、どうしろというのだ……。」(がっくり)
「………いや、何も泣かずとも…。本当に、すっかり思春期の子どもを持ったお父さんになってしまわれて……。」
(初代お世話係も涙)
<飲んだ夜・帰宅>
ギギギィッ……
「た……ただいま………。(ドキドキ)」
「あ、父さん。おかえりなさい。
遅かったですね。お風呂もうお湯張ってありますか……………あ。」
「えッ!?(ドキィッ)ハハ、ハルノ、どうした?」
「………………はぁ。
父さん。今日誰かの血吸って帰ってきましたね。」
「何ィィィッ!?どどどど、どうしてッ!?いやあの、ハルノこれはえっと……!」
「いいですよ。その様子からして、どうやら正当防衛のようですし。」
「別にどっちでもいいじゃねーか、親父ならそうそう証拠なんか残さねーし、栄養も取れて一石二鳥だしよォォー。」
「何があったか知らないけど、ヤバそうなら俺も助けるからな、父さん。」
「な、ドナテロにリキエルまで……その、別に隠すようなつもりはなかったんだが、どうしてそんな一目見ただけで………?」
「いや、だって……。」
「……親父、血ィ飲んだあと必ず唇真っ赤になってんだもん。」
「嘘ォッ!?」
(イチゴ味かき氷のようだな…)
<新しい家族>
「色々あったようだけど、ちゃんと新しい家族と暮らせるようになったようで良かったね、DIO。」
「ああ、ありがとうプッチ。………まあ、まだ分かり合えてるとは到底言えない状況というか、そもそもあちらに歩み寄る気が一切ないというのが現状なわけだが……。
息子たちが来たばかりの頃には毎日質問攻めだったというのになぁ……。あの頃も大変だったが、今は今で奴とどう接してよいのやら……。」
「まあまあ、大丈夫だよ。さっきディエゴ君と話したが、少なくとも君を嫌っているという風には感じなかったよ。むしろ興味を持っている。今は環境が変わったばかりで慣れないことや衝突もあるだろうけど、あの3人を手懐け……ゴホン、信頼を得ることができた君なら、きっと大丈夫だよ。
……………むしろそんなもの、ウェザーと比べれば……。」(どよん)
「あー……未だに戦争状態か。苦労しているな。」
「まあね……。会えば必ずと言っていいほど殺し合いだし、妹は大概ウェザーの味方をするし、ホワイトスネイクは敵にこそならないがたまに思うように動かないし、緑ちゃんとは意思の疎通がとれないし、君は息子と家族にかかりきりだし……もう最近の心の支えといったら教会で最近新しく入ったシスターの子ぐらいなもんで……!」(めそめそ)
「プッチ……なんかすっかり家でのけ者にされるお父さんみたいなこと言うようになって………て、ちょっと待て。『緑ちゃん』?誰だそれは。」
「ああ、最近一緒に暮らし始めたんだよ。」
「何!?プッチにも新しい家族が!?というか神父でしかも妹だっているにも関わらず、女と同棲だなんて大丈夫なのか………。」
ふぎゃあああ……ふぎゃああぁぁぁ………!
「……何故だろう、どこからともなく赤ん坊の泣き声が聞こえるのだが。
マニッシュボーイの来る予定でもあっただろうか……?」
「あー、やっぱり泣いちゃったか。やっぱり星の痣があるとはいえ、彼らにあの子のお守りは無理があったかぁ…。」
「プッチ……?あの子、とは一体誰のことだ?」
「ああ、ええと……簡単にいえば………君?」
「は……?」
その頃、別室にて。
「ふぎゃああああああ!ふぎゃあああああああん!」
「ら……『らせん階段』!『カブトムシ』!えっと………ひ、『秘密の皇帝』!?」
「違うリキエル!秘密の皇帝は最後です!ああっ、また最初から……。」
「つか『14の言葉』を一息で言わねーと泣きやまないとか、どんな赤ん坊なんだよッ!!」
「あぁぁーーッ駄目ッそっち行くと危な………ってああああーーー!近づくと小さくなるぅぅーーーーッ!」
(プッチ家は、兄(39歳神父)、妹(14歳のまま)、『緑色の赤ん坊』(=略して緑ちゃん)の三人暮らしです。(時折ウェザーも来る))
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7部完結に伴い、一巡後の世界の皆様もこっちの近くへ引っ越してきたようです。
ちなみにカラオケ店名を『プレジデント』にしましたが、カーズ様と違いこちらの店は大統領が店長とは限りません。やっぱ若者が集まるなら居酒屋じゃなくカラオケだろ!