<族長>
ドンドコドンドコドンドコ……
「『血は、生命なり!!』」
ドッギャァァーーン!
(縛られた美女に歩み寄り)「………どすゥっ。」(と、刃を振り下ろす)
ビン!ビン、ビンビン!
ドスドス、ドスドスドスドス!(効果音)
「『おぉお〜ん』
………えーと、『我は、ついに手に入れたぞ!石仮面の力を!!』」
ウオオオオオオオオオオン!
「「オーサ!オーサ!オーサ!オーサ!」」
(くる、と向き直り)「『汝、わたしの生命となるか!』」
「お受け取り下さい!」
ズバァッ!
「ちょっヴァニラ早い早い!つかマジで首切んなオイ!」
「ぎゃーーっ!血が、血が!!兄貴ヤバいこれ早くくっつけて!」
「ゴールドエクスペリエンスッ!………ってヴェルサス下がって!今うっかり仮面に血ついたらホントに人間やめちゃいますよ!?」
「……………で、今日は何ごっこなんだ。」
「あ、親父。」
「『族長ごっこ』だよ、父さん。古代アステカの。」
「たくもー、心臓に悪ィ……。ヴァニラやっぱ効果音係やってくれよ。血ぃ捧げる役はヌケサクに任せるからさ。」
「あ、んじゃ次オレが族長な!ほら仮面貸して、ヴェルサス交替交替。」
「ねぇ、さっきから僕、生贄の美女役ばっかりじゃないですか?たまには誰か別の人がやって下さいよ。」
「ええー?ンなこと言ったって兄貴、俺らの誰かが美女役とかできると思うかァ?」
「ヴァニラにやらせてもゴツくなりそうだしな。やっぱ兄貴が適任だって。」
「えええー、ズルいですよー。僕だって族長がいいのにー。せめて『オーサ!』の群衆役とか……。」
「…………毎度思うのだが、お前たちのその遊びの知識は一体どこから仕入れてきているのだ……。」
(ヴァニラやヌケサクまで付き合わせて……。それにしてもこの兄弟、なんか常に遊んでるな)
<ラスボスと主人公>(無駄家族以外も出演)
「……時折考える。果たして本当にこれでよいのだろうかと。」
「どうした?DIO。薮から棒に。」
「いや、少々自分の立ち位置に疑問を感じてな。
一応私はこう、悪の帝王というか、吐き気催す邪悪として、ジョースターの一族と敵対する立場だと、自分では思ってたのだが………最近なんかふと気付いたらすっかり和解ムードというか、ジョジョの家訪ねたり承太郎と飲みに行ったり普通に友人づきあいしているし、はたしてラスボスとして本当にこれでよいものなのかと………。」
「あー、確かにな。現に今もその承太郎、お前の横で飲んでるしな」
「あん?なんだ、悪いか。」
「そういえば、お前たちはどうなのだ?今まで敵対したジョースターの者たちと、今どのように接している?
たとえばそう、ディアボロ、お前とかどうだ?ウチのハルノと、あまり今も敵対しているという雰囲気ではなさそうだが。」
「敵対っていうか、一方的に俺が殺されていると言った方が近い気がするが……。
まぁ、確かに表立って戦っているわけじゃないが、別に和解してるつもりもない。単にバトルとかもう、正直やりたくないだけだ。
今の状態でやり合っても俺が死ぬだけだし、ていうか今あいつと敵対したら確実にDIO、お前まで敵に回るだろうが。俺はそんな危険な真似はごめんだ。そんなことになるくらいなら今のまま、地道に地下でDISC鍛えてた方がいい。」
「地下……?まぁいいが。じゃ、吉良はどうだ?」
「どうもこうも……互いに距離が計りかねてる、てのが、一番近い表現かな。
向こうにすでに顔はバレているが、私は今の所殺人を行おうとは思ってないし、早人とも一応休戦協定を結んでるような状態だから、向こうも迂闊に手を出せないというのが現状だろうな。ま、顔合わせると気まずいことに変わりはないから、極力避けるようにしているがね。」
「ああ、私とほとんど同じだね。ただ私の場合、ウェザーとだけは顔合わせると毎回殺し合いになるんだけれど。はは。」
「笑って言うことか。」
「ようは兄弟喧嘩だろう?可愛いものではないか。私の所など、いまだに店に波紋戦士の襲撃があるのだぞ。」
「何、本当か?カーズ。」
「うむ。大抵ジョセフとシーザーの二人組でな。
私はすでに究極生物という悲願を果たしたし、今更戦う理由など持っていないのだが、あちらはそうもいかないらしい。
ま、数千年続く波紋戦士との因縁とはそう簡単に断ち切れるものではないということだな。」
「ほう……大変だな。しかし、一体どうやって撃退しているんだ?」
「それが、奴らもなかなかに手口が巧妙でな。
下手に店内で争うと一般客にも被害が出るから、まずは普通の客を装って店の中に入ってくる。そして席に着いてからおもむろに、注文を取りにきた店員(主にワムウ)に執拗に絡んで挑発したり、つまみの味にケチをつけたり、あるいは女性客をナンパするなどしてさまざまな営業妨害を仕掛けてくるのだ。
おそらく我々を怒らせ、客を巻き込まぬ店外へ誘い出そうという魂胆なのだろうが、甘い甘い。こちらも対策を練り、店内に『乱闘禁止』の貼り紙をしたり、最近では奴らが店にやってきたと同時につき出しなどのサービスを行い、さらにつまみをさりげなく大盛りにして奴らの腹を満たし、早めに店を出て行かせるなどして被害を未然に防いでいる。(えへん)
しかし大体月2度のペースでやって来るのだが、今だに奴らに諦めたという気配はない。やれやれ、まったく懲りない連中だ。」
「……………カーズ、それ襲撃違う。普通に飲みに来てる。」
「和解ムード全開じゃないか……!しかもさりげなくカーズもなんかもてなしてるし……!」
「……なるほど、ジジイが先週べろんべろんで帰ってきたのはそういうわけがあったのか。ったく、やれやれだぜ。主人公としての自覚があるのか、あのジジイは。」
「貴様が言えた義理ではないと思うが。
しかし、まぁ私だけではないというのは安心したか。ラスボスと主人公がこれだけ呑気していられるということは、それだけ世界は平和ということだよな。うん。」
(DIO様は何かを悟ったようです)
<風邪>
「38度2分………完全に風邪だな。ここの所急に冷え込んだものな。」
「………畜生……なんで俺だけ………ぐえっほ、ごほっ!」
「とにかく、今日は寝てなさい、ドナテロ。あとでヴァニラに粥でも作らせよう。」
「………わかったから、もう行けよ、親父。親父までうつりてーのかよ。」
「私なら心配要らん、吸血鬼だからな。
今日は一日私が傍にいてやるから、安心しなさい。何かしてほしいことはあるか?」
「……………………別に………。」(ふいっ)
(ドアの陰から)「「「……………………………。」」」
2日後。
「ドナテロが治ったと思ったら、今度はウンガロか……もしかしてドナテロからうつってしまったのだろうか?接触は控えさせたつもりだが……。」
「親父ィ〜、熱い〜………。なぁ、ちょっと手ェ額に当ててくんねぇ?」
「うん?こうか?」
「……あー、冷てぇ……。やっぱ親父の手いいよな。あんがとな、親父。」
「ああ。早く良くなるといいな、ウンガロ。」
3日後。
「今度はリキエルとは……一体どういうことだ?流行ってるのかもしれんが、なぜこうも順番に引くのだろうか?インフルエンザではないようだし………。」
「ゴホ、ゴホ………ごめんな、父さん。昨日までウンガロの看病してたのに、俺まで倒れちゃって………。」
「ああ、謝る必要はない、リキエル。私なら大丈夫だから、ちゃんと休んでいなさい。氷枕、取り替えてくるか?」
「ううん、まだ大丈夫。………ありがとう。」
更に2日後。
「やあ、DIO。リキエルに会いに来たんだけど、どこにいるかな?」
「おや、プッチ。見舞いに来てくれたのか?しかしリキエルなら丁度今朝熱が下がったところで………。」
「いや、そうじゃなくて、彼に貸したDISCを返してもらいに来たんだ。」
「DISC?」
「ああ。この間までウンガロに貸して、その後リキエルに渡したんだが、今日ジョルノ君からも貸してほしいと頼まれてね。
まったく、兄弟そろって何に使うんだろうね、『風邪のDISC』なんてさ。」
「………………………なんだと?」
(息子たち発想が姑息!)
<襲撃>(無駄家族以外も出演)
「………よいか、皆。この館こそが、現在のディオの潜伏場所じゃ。」
「ここが………。では、いよいよ………。」
「うむ。幸い今は夜が明けたばかり。奴も活動はしておらんはずだし、万一我々の波紋の力だけでは及ばずとも日の光にさらしてやれば、十分に勝機はある。
ダイアー、メッシーナ、ロギンズ、ゆくぞ!」
「おうッ!
…………ところでツェペリよ。お前の教え子、ジョナサン・ジョースターは来なかったのか?」
「うむ、誘ったらなぜか妙に嫌がってな。『やめたほうがいい』とか言っとったので置いてきた。」
「ほう、今更恐怖するというのもおかしな話だが、一体何が……。」
「家族がどうとか言っていた気がするが………まあ、ジョジョの奴も今は妻帯者じゃしのう。多分色々あるんじゃろう。」
「ジョセフとシーザーが来れればよかったのですが、あいつら昨日飲み過ぎたとかで二日酔いらしくて………まったくだらしのない。」
「まあ、しかたない。ここまで来てしまった以上、また日を改めて、というわけにもいかんしの。何より、すでに気付かれている可能性もある。
では………ゆくぞ!」
「「「おうッ!!」」」
バァァーーンッ!!
「ディオーーーッ!!貴様の穢れたる野望、打ち砕きに来たぞッ!!」
「………これは、ようこそいらっしゃいました。」
「は。」
「わたくし執事のテレンスと申しますが、失礼ながらお名前とご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか? 」
「あ、え………えーと、波紋戦士一行です。要件はその、ちょっと襲撃に………。」
「波紋戦士御一行様、でいらっしゃいますね。かしこまりました、主に取り次ぎますので少々お待ちを。
…………DIO様ー、起きておられますかー?」
「あふぁ……ふぁんだテレンふ、ひゃくじん(客人)か?いっらい……………ふおおおおッ!!?
きひゃまらッ、なれここにッ!?」
「父さん、泡、泡!垂れてます垂れてます、ちゃんと拭いて、ほら!」
「うぐ………ふぉのれ、はほんへいひろも(波紋戦士ども)め………よりにもよっへ日暮れにもっろも遠い明へ方を狙って、ひはもひほが(しかも人が)歯を磨いとる時にひゅーげひ(襲撃)ひてくるとは、ひへふ(卑劣)なひゃつらめ!」
「いや、何言っとるのかわからんし。」
「ええと、まさか起きてるとは思わず…………なんか、色々とすまんかった。まずは口をすすいでくれ。待ってるから。」
「どしたー、誰か来てんのか?あれ、誰こいつら、親父の知り合い?」
「なんか、波紋戦士御一行とか名乗ってたそうですけど………ヴェルサスたち知ってます?」
「波紋ん?何それ、スタンドとなんか違うの?」
「さぁ………。」
「(ガラガラガラ……ペッ)……ふぅ。全く、人が寝てることを想定して訪ねてくるとか、どんだけ非常識なんだ貴様ら。」
「ええと、申し訳ない。……あれ?」
「………ふん、まあよい。確かに普段なら寝ている時間だったが、今日こうして起きていたのも、ひとつの運命だろう。
さてと………襲撃、と言ったか?今更、波紋などという脆弱な力でこのDIOを倒そうなどと考えるとは、まったくとんだ愚か者どもだなぁ?
わざわざここまで直接挑みに来たということは、全員死ぬ覚悟は出来ているのだろう。ならば望みどおり、一瞬で全員地獄に送ってくれよ………!」
「親父ィー?それはいいけど、その前になんで今日こんな早起きしたのか、まさか忘れてねぇだろうな?」
「む?………おお、そうだった。
今日は皆で、映画見に行くんだったよな。すまんすまん、すぐ支度するから。」
「ったく、しっかりしろよー?寝起き悪ぃ兄貴でさえ今日はちゃんと起きてんだから。」
「ちょっとヴェルサス、『さえ』ってなんですか。僕だって普段からちゃんとそれぐらいしてますよ。」
「全く、近所の映画館で夜間上映しているところが一つもないとは、厄介な……まあいいが。おいテレンス、すぐに強力日焼け止めと黒マントと日傘の用意を。それから運転手(ウィルソン上院議員)も手配。」
「かしこまりました。」
「ちょ、ちょっと待て、ワシらは。」
「うん?あー、すまん、そういうわけだから今日は無理。また今度な。」
「ちょっ待てオイ!」
「しつこいな…………そうだな、アイス。適当に相手をしてから追い返すように。」
「はっ。………殺さなくてよろしいので。」
「それはそのうち、私が直接やる。」
「……承知いたしました。」(ぬっ)
「な、えええええええッ!?し、屍生人!?いやむしろ柱の男か!?」
「父さーん、早く早く―。」
「あーはいはいはい、今行くからなー。」
(『帝王モード』、強制オフ)
<ハロウィン2009・準備編>
「「「「…………………………………。」」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「……………やっぱ、よォ。
リキエルは、ミイラ男とかいいんじゃねぇか?包帯巻くだけなら楽そうだし、お前そういう異国っぽいの似合いそうだし。なぁ?」
「え、えええ?いや、でも、巻くだけって言ったって、全身だと大分手間取りそうじゃないか?うっかりほどけて絡まりでもしたら、俺確実にパニック起こす自信があるし。」
「いや、ンな自信持つなよ。んじゃ、東洋のキョンシーとか、あとは……………巨大ロッズのきぐるみ、とか。」
「(ぶふぉっ)………び、微妙に心惹かれるものがあるけど、それどうやって衣装調達する気だよ、ヴェルサス?」
「そりゃ、こう……テレンスに頼むとか。
あ、ウンガロは当然、ゾンビかフランケンシュタインで決まりだよな。ノーメイクでイケるぜ?」
「喧嘩売る気ならオレはいつでも買うけどよ。それならヴェルサスは、いっそ神父服着ちまえばいいんじゃねーかぁ?別に化け物のカッコって決まったわけじゃないんだし、確かサイズまるきり同じなんだろ?せっかくだし、プッチ神父に借りに行けよ。」
「それは暗に俺に死ねって言ってるわけだよな。上等だ、表出ろ。生き埋めにしてやんよ。」
「よしなさい、ヴェルサス。先に口を出したのはあなたでしょうが。」
「………あー。兄貴は、もう、アレで決まりだよな。せっかく金髪三つ編みなんだし、コロネほどいてアホ毛(アンテナ)一本立てて。」
「で、赤いマントつけて右腕と左足機械にして隣にでっかい鎧置いてな。」
「そこで一言どうぞ!」
「『誰が豆粒ドチビだーーーッ!!』………って何言わせるんですか!」
「駄目か?んじゃ、思い切ってその髪、肩ぐらいまでバッサリ切って揃えちまうとか。どうせ後からGEで戻せんだろ?」
「それで、緑の軍服来て、ライフル背負って、あと語尾は『〜である』にして。」
「そこで一発、不審者に向けて発砲!」
「ダショーーン!………って、だからいい加減にしなさい!
自分たちの声優がまだ決まってないからって僕ので遊ばないでくださいよ!」
「うっ、うるせーな………6部は望み薄なんだよ、アニメもゲームも。ああもう、じゃ結局どうすんだよ………。」
「「「「……………………………………………。」」」」
「……………はぁ。
なぁ、兄貴たちさぁ。」
「……なんです、ウンガロ。」
「…………もう、いいんじゃねえか?4人全員、『吸血鬼』でも。」
「「「ッ……!!」」」
(末っ子の一声で兄弟の『吸血鬼役取り合い合戦』にも終止符が)
<ハロウィン2009・当日編>(無駄家族以外も出演)
「……ジョナサン、お菓子の用意はこのぐらいでよいかしら?」
「うん、充分だと思うよ。ありがとう、エリナ。
今年はDIOの息子たちもウチに来てくれるそうだし、楽しみだな。仮装してくるって言っていたけど、一体どんな………(リンゴォーン)あ、来たみたいだね。はーい。」
ギィ………バタン。
「「「「「WRYYYYYYYYYYッ!!TRIIIICK OR BLOOOOOOOOODッ!!!」」」」」(←DIO×5)
「うわあああああああああ!!!」
「………どうも、こんばんはジョナサンおじさん。(ベリリ)僕らですよ、びっくりしましたか?」
「び……びっくりどころの話じゃなかったよ!いくらなんでも、気合い入れ過ぎだろう君たち!どうしたんだいそれ!?」
「いやー、親父の部下のラバーソウルってやつに協力してもらってさ。肉スライムで全員親父の顔にしてもらったんだ。ほらほら、体格もちょっと増量!」
「世間には肉スプレーで他人に変装させたりできる奴もいるらしいから、結構イケんじゃねえかって思ってさ。流石に服まで全部スライムってのは量が足りねぇから、そこは親父の服の予備借りたんだけどよォォーー。」
「ちなみに、射程距離の都合でラバーソウルには近くまで付いてきてもらっていたり。どう?結構インパクトあったろ?」
「はぁ……よくはわからないけど、とにかく君たちの熱意だけはしっかり伝わったよ。
あ、ということは、君たち5人いるし、残りの一人がそのラバーソウルさんかい?」
「いいえ、違います。
さぁ、それではおじさん、第二関門です。ほらみんな、シャッフルシャッフル。」
ぐるぐるぐる…………ピタ。
「「「「「さぁッ!!この中に、何と本物のディオ・ブランドーが混ざっているッ!!」」」」」
「え゛。」
「ふっふっふ……当てられるかァ?ジョジョォ……。」
「チャンスはたった一度きりだぞ、ジョジョよ。」
「もし貴様がその一度で見事当てれば、私も何もせずに帰ってやろう。」
「しかしッ!万一不正解の場合は、菓子の代わりにッ!!」
「貴様のそのジョースターの血を、2リットルペットボトルに一杯分頂いてゆくッ!!」
「「「「「さあ、どうするジョジョッ!!WRYYYYYYYYYッ!!!」」」」」
「……ッ子供の行事に混ざって一体何をしてるだァァァーーーッディオーーーーッ!!」
(この後、結局当てられなかったジョナサンのハイパー献血タイムが始まります)
<ポッキーの日>
「お、兄貴ポッキー食ってる。一本ちょうだい。」
「いいですよ。じゃ、端っこ持って……はい、そのまま。」
………パキンッ。
「あ。」
「えーっと、何々……………手元付近で、ほぼ垂直に折れた場合、優柔不断で思い切りの悪いタイプ、いざという時恋を逃すことも……。なるほど、結構当たってる気がしますね。」
「えっと……兄貴?その、今開いてるその本って一体……。」
「あ、リキエルも読みますか?『How to ポッキー占い』。
康一君から借りたんですけど、意外と面白いですよ。ポッキーの折れ方で性格や運勢を占うんです。」
「へぇ……なんか適当だなぁ。ていうか、兄貴って占いとか信じる方だっけ?」
「普段はそうでもないですけど、これは単純だからこそ逆に面白いんですよ。ちなみに、ヴェルサスは真ん中あたりで斜めに折れたのでやや自己中心型でわがまま。ウンガロは真ん中で垂直に折れたので浮き沈みの激しい性格、だそうです。」
「あ、ふしぎ。なんか結構当たってる気がする。」
「まあこういうのは、誰でも多少当たってるところがあるものなんですけどね。でもちょっと面白いでしょう?」
「確かに…。……あ、父さんだ!な、ちょっと兄貴、ポッキー貸して。
おーい、父さーん!なあ、ポッキー食べる?」
「うん?ああ。」
パクッ。
「………あれ。」
ポリポリポリポリポリ………ごくん。
「ん。ありがとうな、リキエル。」
「……あ、うん。
…………………えーっと、兄貴。今のはどういうタイプに……。」
「……うーん、ちょっと本には載ってないですねえ……。」
(『How to ポッキー占い』 原案:杉本鈴美 著者:岸部露伴)
<好みのタイプ>
「結局さぁ、彼女欲しいとか言ってるけど、ヴェルサスどんな女がタイプなんだよ?」
「あぁ?そりゃお前、顔が良くて胸がでかくて世話好きで、あ、でも世話好きっつってもいちいち口うるせー奴とかベタベタひっついてくるようなやつは抜きな。んで、料理上手で裁縫とかも出来てエラソーな態度取らずにつつましく男に従う感じ、あれだ、日本でいうヤマトナデシコとかいうのみたいなやつならもう………。」
「長ぇよ。つかいねーよそんなパーフェクト女。もっとハードル下げとけって。」
「……………俺を幸せにしてくれるやつなら、誰でも。」
「……重くすんなよ。」
「あ、俺はさ、俺はさ、どっちかっつーと年上の方がいいんだよな。頼れる感じっていうか、大人の魅力っていうかさ。
んで、知的な感じで、クール系な美人だったりするとかなりストライクだな。こう、黒髪ロングのストレートヘアーとかさー。」
「わかりやすいなー、リキエル。つか熟女好みかよ。」
「じゅ、熟女とか言うなよ……。」
「あー、親父が前言ってたけど、なんかその条件に当てはまりそうなやつがこの近所に住んでるらしいぜ?」
「え、マジで?」
「ただし、年齢50歳で未亡人らしいが。」
「ちょっムリムリムリムリ!いくら年上っつってもせめて上限40まで!」
「いや40も既にババアじゃね!?意外に守備範囲広いなリキエル!」
「だって、ほら、神父もそろそろ40のハズだし、そう考えたら40ってまだ結構若いんじゃないかなって……。」
「……神父のヤロー基準にすんのはよしとけ。あれは親父並に特例。んで、ウンガロは?」
「えー、オレ?んーと……一緒にいて楽しい奴、かな。冗談言って笑い合ったりとか、遊びに行って無邪気にはしゃいだりするような感じで。多少ドジなとこあったりしてもいいな、見てて飽きねぇだろうし。」
「ええー?わかんねぇなー。俺バカ女って絶対無理。そういうのって無自覚に人の逆鱗触れたりしそうじゃね?」
「いや考えすぎだろ、ヴェルサス。」
「いーや、そういうのに限って重要な知らせ出し忘れたり、悪気もなしにマフィアに話しかけて絡まれた挙句こっちに迷惑かけてきたりするんだって。」
「……いやに具体的だな。体験談かぁ?」
「別に、そういうわけじゃねえけどよ。ちょっと聞いた話。」
「なんかさ、俺らって、ドラマとかでよくある『兄弟同士同じ女を取り合って泥沼化』って展開が絶対起きそうにないよな。」
「だな、好みがバラバラにもほどがある。」
「わかりませんよ?恋愛ってのは、好みとかタイプとか関係なしにいきなり襲ってくるものだそうですから。」
「お、兄貴。ちょうどいい、兄貴の好みはどうなんだよ?色恋に興味ねぇとか言ってるけど、じゃあどんな女だったら付き合えんだよ?」
「えー?そうですねぇ、あまり想定したこともないんですけど……多くは望みませんが、まず無駄に騒がない人でしょうか。僕、やたらと口数の多い女性ってどうにも駄目なんですよね。
それで、ある程度話が合うくらいには教養があって、控えめで、あとは最低限整った顔立ちの人であるならば別段問題はないと思いますよ。あ、あと個人的に、トリッシュや徐倫のように僕より腕力があったりする戦闘的なタイプの女性ってどうにも異性として見られないっていうのはありますけど。」
「…………すげぇよ、兄貴。まさかのヴェルサス以上だ。」
「まぁ、兄貴もまだ15だもんな……。夢見ててもおかしくない年齢だけど……。」
「兄貴……手遅れになる前に一応教えておくけどな。そんな女はこの世に存在しねーよ。」
「ええー?」
「そうそう、女ってのは基本おしゃべりなもんだし、兄貴と会話が成立するってどんだけ生物学に特化しなきゃなんねえんだよ。」
「そもそもこのジョジョ界で非ィ戦闘的な女ってそれだけでもうファンタジーやメルヘンの生き物だしな。」
「悪いことは言わねえ、兄貴………現実を見ろ。」
「そ、そんなことないですよ!現に、この間チンピラから助けた女の子とかは本当におとなしそうな子でしたよ!」
「え、何それ何それ。どんな子?」
「こう、僕より少し年下くらいで、ゆるいウェーブのかかった金髪の、育ちのよさそうな子でしたよ。何故か覆面をしたチンピラに絡まれていたので、追い払ってあげたらちょっと大げさなくらい『ありがとう』って感謝されて……。うん、本当に可愛らしい子でしたよ。誰からも愛されるような、春のそよ風みたいな子でした。恋をするとしたら、あんな女性がいいと思います。守ってあげたいと思うような……………どうしましたか、ヴェルサス。なんか顔色が悪いですけど。」
「………………兄貴、駄目だ、そいつだけは、絶対やめといた方がいい。」(汗)
「はい?」
「なんだよ、もしかして好みだったのか?」
「じゃなくて、死ぬから。マジそれ死亡フラグだから!!」
(体験者(というより被害者)は語る)
<食事事情2>
注:まだ6部三人息子がDIOの館に来たばかりの頃。
「………美味ぇ。
この家、無駄にデケェし妙な奴もいるけど、飯だけはやたらと美味いよなー……。」
「あー、確かにな。しかも和洋中何でも出るし。一体誰が作ってんだ?あの執事か?」
「ああ、食事はテレンスさんではなくヴァ……。」
「テメーには聞いてねぇよ。黙ってろ、ガキ。」
「…………………。」
「(ぼそぼそ)おい、ヴェルサス、マズいって……。若く見えるけど、一応俺らの兄なんだろ?」
「へっ、関係ねぇだろ。こんなガキにいちいち敬語なんざ使ってられっかよ。」
「ったく……。あ、ええと、DIOさ……じゃない、その、と……父、さん……。」
「………別に、無理をする必要はない。まだここに来て日も浅いのだし、好きなように呼んでくれて構わない。」
「は、はあ………。じゃ、その、この家って、誰が食事の用意をしてるんですか?もしかして、専属のコックがいたりとか……。」
「いや、食事については全てヴァニラ・アイスに任せている。」
「ヴァニラ・アイス……って……。」
「おや、挨拶させていなかったか?私の配下の一人で、スタンドは……。」
「スタンド名はクリーム、ウェーブのかかったロングヘアーと太ももを大胆に露出させたセクシーなファッションが特徴的な、長身でスタイル抜群の健気で献身的な性格の人、ですよね、ヴァニラさんて。」
「「「…………………………………。」」」
「うん?まあ、そう言えなくもないが、どうしたんだハルノ突然……。」
「………ちょっと、俺、そいつに挨拶してくるわ。(ガタ)
いや、別に深い意味はないんだけど、単にちょっと挨拶がてらそいつの顔でも見てこようかな、なんて思っただけで、本当に他意はないんだからな。」
「ちょ、ヴェルサス行動早っ。お、俺もあの、食事の礼でもしてこようかな。まだ多分、厨房にいるよな?」
「あっ、オレもオレも!お前ら抜け駆けすんな!」(ガタガタ)
バタバタバタバタ……
「………?どうしたというのだ、急に……。ハルノ、お前もなぜ笑っている?」
「いえ、別に。」
「………ジョルノ様………酷いことをなされる……。」
「どうしました、テレンスさん?僕は別に嘘は一つも言ってませんよ。」
にぎゃああああーーーーーッ………!!
「なっ、何事だ!?今の、断末魔のような悲鳴は……ッ!?」
「さあ?理想と現実の、果てしないギャップでも目の当たりにしたんじゃないですか?」
(おにいちゃん腹黒いよ!)
<食事事情2・ver現代>
「あぁ……あったよな、そんなこと。」
「ったくな。あん時の兄貴はホント、鬼畜以外の何物でもなかったよな。」
「悪かったですってば、もう。根に持ちますねぇ、ヴェルサスは。」
「当然だろ。あれからしばらくブルマの夢にうなされたんだからな。」
「まあ、今じゃすっかりヴァニラの姿も見慣れたけどなー。
………あ、噂をすればヴァニラ、今から出かけるのか?」
「はい、リキエル様。夕食の買い出しを少々……。」
「あ、んじゃさ、オレ今日シチューがいいな、クリームシチュー。」
「あー、いいな、寒ぃし。水入れずに牛乳だけで煮込むやつな。鶏肉ゴロゴロで。」
「僕鶏肉あんまり好きじゃないんですけど……ま、いいか。
じゃあヴァニラさん、それでお願いします。」
「はっ、承知いたしました。」
スタ、スタ、スタ……
「……………………あ。」
「?どうした、兄貴?」
「……今、ヴァニラさん、あの恰好のまま出かけちゃいましたね。」
「あ。」
「本当だ。」
「………まぁでも、カーズがふんどし姿でスーパーに出没するご時世だし、いいんじゃね?別に。」
「あー。」
「それもそうですね。」
「だな。」
(人は慣れる生き物である…)
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『ぐだぐだジョジョワールド』、ブランドー家を中心に展開中。