4.地獄に落ちろ
◎月☆日、晴れ。
DIO様がなんか拾ってきた。
「つーか、なんですかそいつ………鳥?」
「ハヤブサだ。美しいだろう。知能もすこぶる高いようでな……。スカウトはなかなか大変だった。」
得意げにそう言うと、DIO様は肩に留まらせた鳥に楽しそうに頬を寄せた。
DIO様は時折、ふらっと館を出て何日か帰らない時がある。
たいていそういう時はこうして世界各国で配下集めをしているらしい。しかし昼間外に出るとまずいはずなのに、一体どうやって移動してるんだか。わりと謎である。俺としちゃ、そのまま帰って来なくなってくれるのが一番有り難かったりするんだが。
それにしても、まさか動物まで連れ帰ってくるとは思わなかった。
「スカウトって……ペットじゃなくて?
まさかそいつも、あの、スタンド使いとかいうやつなんですかい?だって鳥ですよ?」
「スタンドとは強靭な精神が具現化した存在だ。人間だけに発現するというわけではない。
種族にかかわらず、優れた才能、優れた精神を持っているということ……スタンドとは、その証のようなものだ。」
………ふん、どーせ俺は貧弱な精神ですから、スタンドなんて発現しませんでしたよ。いらねーよそんな背後霊。
「……へー、そりゃすごいですねー。
でも所詮はトリですからねー。スタンド持っていたところで使いこなせてるかどうかわかりませんよ。命令だって三歩歩けば忘れちまうかもしれないし。なんせトリ頭っていうくらいですから。」
腹立ちまぎれに、あえてトリに聞えよがしに言ってやる。
どうせ鳥に嫌味などわかるまい………と思った次の瞬間、鳥がかぱりと口を開いた。
口奥にキラリとのぞく、鋭い氷の槍。
「げぇっ!?」
「知能も高い、と言ったろう。人の言葉はだいたい理解しているらしい。スタンドも強力だから、滅多なことを言うと怪我をするぞ?まあ、お前には既に怪我なぞ意味が無いがな。」
DIO様の言葉に、口を閉じた鳥がフフンと馬鹿にするように笑った。
それだけでもムカっときたのに、更に鳥はDIO様の方から飛び立ち、俺の前へと止まる。そして翼を下に向け………まるで人間が親指を立てるみたいに器用に翼の一部だけを立てて、くい、と下へ動かした。
何のジェスチャーかは、すぐわかった。
―――地獄へ落ちろ。
ブチ。
切れた。俺の中で、決定的な何かが切れた。
「ブッ殺してやるこのトリッ!!その羽根むしって丸焼きにしてやらあ!!」
「クェーーーッ!!」
俺が跳びかかると同時にトリは空中へと浮かび上がり、威嚇の声をあげる。
殺る気満々ってか。上等だ霊長類の本気見せてやるよ!って俺もう人間じゃねぇけどな!!
つかみ合いの乱闘に発展する俺達を尻目にDIO様は、
「さて、スタンド名はどうするかな…。
タロットで空いているというと、『愚者』のカードだろうか?しかしこれほど賢いというのに愚者というのも似合わんな……。他に何かあったかな……?」
と、のんきに首をかしげている。
「ああそうだ、それよりも先にそいつ自身の呼び名を決め手やらんとな。何がいいか……おい、貴様も何かいい案はな……。」
「DIO様!こんなムカつくやつ売っ払っちまいましょう!そんでもっと別の、猫でもハムスターでももっと可愛げのあるやつ買ってきましょう!なんなら俺、今からでもペットショップ行ってきますから!」
叫ぶ俺に、しかしDIO様はふむと考えた。そして
「ペットショップ………ペットショップ?」
「あの、DIO様?」
「ふむ、語呂がいいな。……よし、これからそいつのことは、『ペットショップ』と呼ぶことにしよう。」
「…………はぁ?」
マジか、おい。
服の事もそうだが、この方のセンスはどうもいつも突き抜けているというか、何かをぶち破っている。
トリも、あまりのことに呆然としてやがる。そんな鳥の様子を知ってか知らずか、DIO様は機嫌よく、
「おいで、ペットショップ。」
と呼びかけた。
DIO様様の言葉に、鳥はしばし行くべきか否か悩んでいたようだが、ややあって心底嫌そうにDIO様の方へと飛び、再び肩に止まった。
「ほら、自分が呼ばれたことを理解したぞ。
どうやらこの名が気に入ったようだな。」
いやいやいやいやいやいや。
ツッコミを懸命にこらえる俺を意に介した風もなく、DIO様は嬉しそうに「ペットショップ、お前の寝床を用意してやろう」と呼びかけている。
見れば、トリ改めペットショップが恨めしそうに俺の方を見ている。そして、DIO様に気付かれないよう、再度羽根を立てて下に向けた。
……………俺を恨むなよ、俺を。
End
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服といいネーミングセンスといい、流石DIO様の感性は色々なものをぶっちぎっている。
スタンド名はエンヤがタロットから決めてくれたんだと信じてる。ワールドさん、エンヤ婆ちゃんに救われたな‥‥。
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