その2.ライバル検事の相違点について



「さて、と。オドロキくんには不幸が足りないと分かったところで、次はライバルである検事側に焦点を当ててみようか。」
「ううう‥‥オレ、幸福だって言われてるはずなのに、妙に喜べない‥‥‥。」
「それでは今回のライバル検事さん、牙琉検事にお越しいただきました!検事さん、どうぞー!」


「やあ、どうも。
  呼ばれたから来てみたけど‥‥‥相変わらず、随分ヒマなことやってるね、君たち。」
「‥‥‥呼ばれてやって来る牙琉検事も、十分ヒマな人だと思いますけど。」
「おおー、やっぱりカッコいいねー。」
「おや、刑事くんに似たお嬢さん。どうもありがとう。」(ニコッ)
「きゃあ!『お嬢さん』だって!」
(オオゲサに照れているな‥‥。)
「それで?僕にもオデコくんみたいに、何か足りないものがあるのかな?」
「ううん‥‥そうだねぇ。『検事局始まって以来の天才』とか、『クールで美形で人気者』とか、『財力・権力には不自由しない』とか、色々と伝統に沿った設定だとは思うけどね。」
「あとは、『ハデな恰好』とか、『実力を鼻にかけた強気な言動』とかも、ある種検事側の鉄則だしね。」
「‥‥‥‥‥‥‥。」
「うーん‥‥あえて言うなら‥‥‥ちょっと『無個性』かな。
  あと、『敵意がない』とか。」
「む、無個性‥‥‥?」(汗)
「ええええっ!!だ、だって、ガリュウ検事はガリューウェーブのボーカルですよ!?無個性だなんて‥‥!」
「ちっちっち、アマいよ、みぬきちゃん。
  経歴は確かにハデかもしれないけど、法廷の中じゃそんなことは全部なかったことにされちゃうんだよ。」
「え、そうなんですか?」
「うん。
  あたしだってほら、霊媒とか家元とか、経歴だけ見たら色々目立ってもいいはずのに、いざ法廷に入ったら本当ジミなもんなんだから。」
「いやいや、真宵ちゃんは十分に注目を集めていたけどね。
  それはともかく、今までの検事を見ていくと、大抵リアクションが異常なまでに派手なんだよね。ムチを振り回したり、コーヒーを噴いたり。」
「そうそう。優雅にオジギしてみせたり、指を鳴らしてみせたりね。エアギターは確かに派手だったと思うんだけど、決め手に欠けると思うな、あたしは。」
「決め手‥‥ねぇ。」
「どうせなら、ホンモノのギターを持ち込んで演奏しちゃう、ぐらいやっちゃってもよかったんじゃないかな。」
「さ、さすがに毎回法廷であんな大音量ライブを開かれたら、オレの耳が持ちませんよ!」
「とりあえず、壁を叩くモーションはかなりオリジナルなんだけどな。」
「ああ!あれは格好いいですよね!」
「その前に、まずはダメージモーションがどうにも地味なんだよね。冷や汗も頭抱えも、どれも現役時代に僕がやりまくったし。」
「やっぱり検事さんなら、白目剥いたり、肩を抑えたり、毛が抜けたり煙ふいたり。」
「‥‥‥いや、僕も若いし人間だし、最後二つは特に遠慮させてもらいたいな。
  大体ほら、僕ってロッカーだからさ。」
「はぁ、ロッカー‥‥。」
「言っておくが、物置のロッカーじゃないからね。(←牽制)
  とにかく、そういうクールじゃないのってキライなんだよね。騒いだり叫んだり、みっともないだろ?」
「ああああああっ!!!」
「!?」
「さ、『叫ぶ』‥‥!それだよ!ねぇなるほどくん!」
「ああ‥‥。牙琉検事、君に足りなかったものは個性じゃない、『絶叫』だったんだよ!!」(ダダダーーン!!)
(またかよ!!)




「それで、『敵意』は?そんなの、検事さんに必要なの?」
「もちろんだよ。検事っていうのは、弁護士の敵だからね。主人公である弁護士が成長するためにも、検事には大きな障害になってもらわないと困るんだよ。
  牙琉検事は僕に対しては敵愾心が強いようだったけど、反面オドロキくんには特に妨害も何もしてこなかったしね。」
「妨害って、そんな‥‥。確かに検事と弁護士は法廷で争うものですけど、だからって妨害だなんてするわけは‥‥。」
「何言ってるんだい、オドロキくん。本来検事っていうのは、あらゆる手を使って被告人を有罪にしようとするものなんだよ。
  盗撮したり、論点をすり替えたり、証人と話をさせないようにしたり、スタンガン使って証拠品を奪ったり。」
「オイ待て!最初のやつと最後のやつは立派に犯罪じゃないか!!」
「言ったろ。どんな手段を使ってでも、それこそ犯罪を犯してでも犯罪者をとらえようとする、それが検事というものなんだって。」
「い、異議あり!明らかに矛盾しています!」
「ま、確かに今までの人たちがちょっとやり過ぎだっただけかもしれないけどね。がりゅう検事、いまどきの検事さんに珍しいぐらいまっすぐな人だし。」
「そこを差し引いたとしても、牙琉検事。君はあまりにもオドロキくんに対して友好的過ぎる。事件現場に入れてあげたり、ライブに招待したり‥‥そんなんじゃ弁護士と検事の癒着と思われても仕方がないぞ。」
「し、仕方なくないですよ!大体、成歩堂さんだって幼馴染がライバルの検事だったじゃないですか!」
「仕方なくないことないよ。(うわっ、ややこし!)アイツとはほとんど絶縁状態だったし、事件がひと段落して関係が修復された後だって裁判では情けヨウシャなく叩き潰してこようとしてたし。」
「でも、実際に情けヨウシャなく叩き潰されてたのはみつるぎ検事のほうだったよね、毎回。」
「まあね。だってアイツのダメージモーション、半端なく面白かったし。」
「うわーー、相変わらずヒドいねー、なるほどくん。」
「あっはっはっはっは‥‥‥。」


「‥‥お、鬼だ、この人‥‥‥。(冷や汗)」
「こんな男を僕は初法廷で相手にしていたのか‥‥‥。」(頭抱え)





続く

          


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 牙琉検事は本当いい人すぎて倒す爽快感がなかった。
 2話では掌の上で踊らされた感が強く、3話目4話目は不憫で見ていられなかった‥‥。


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