注:それぞれの設定的なものは「ラスボスとごはん」シリーズを参照。




023: 電話を活用せよ。





[その1.カーズの場合]


「はいもしもし……ん?俺、だと?ああ、なんだエシディシか。声が違ったからわからなかった。全く、この電話というものは便利ではあるがどうにも使いづらいな。それで、どうかしたのか?
 ………………何ィッ!?バイク事故だと!?で、バイクとは何だ!?」
「おいこら、カーズ。」
「ほぅ、一人用の乗り物……貴様そんなものに乗れたのか。で、何人だ?なに、たったの一人か?……少ないな。
 うん?何がって、そこであと三人ほど轢き殺しておけば、調達する手間が省けたではないか。まぁ、欲を言うならお替わり用にもう一人二人余分に………何?何の話って、だから今晩の夕食の………!」
「うおおおいカーズ!こら、聞け!おい!」
「何だ一体、今話してる所なんだから静かに………む?
 おいエシディシ、貴様何故ここにいるのだ!?今の今まで電話で話していただろうが!!」
「いや、だからさぁ……。」
「エシディシはここにいる、しかし電話の向こうにも確かにエシディシがいる……。何ということだ!エシディシが二人いる!!」
「待てオイ。」
「これはきっと、何らかの原因でエシディシが縦に真っ二つに割れ、その二つがそれぞれ身体を回復させた結果、エシディシが二人に分かれてしまったに違いないッ!!」
「俺はプラナリアか!?」
「大変だ!このままでは二人のエシディシがどちらが本物のエシディシかを決めるために殺し合いを始めてしまう!!どちらもエシディシには変わりないのにそんなことをさせるわけにはいかん!
 おい電話のエシディシ、聞いているか!?とにかく今すぐそちらに向かうからな!話はそれからだ!うん?轢いた相手への賠償金?知るか!捨て置けィ!(ガチャン!!)」

 ブワサァッ!!

「よし、ここにいるエシディシ!留守は任せたぞ!すぐにもう一人のエシディシを連れてくるからなーーー!!」(バッサバッサ)
「カーズてめぇ人の話を聞けェェェェーーッ!つーか天才を自称すんなら人間のニュースくらいちゃんと見ろよォォォーーッ!!」










[その2.吉良の場合]


「パパのやつ、さっきからずっと誰かと電話してる……。ずいぶん楽しそうだけど、一体誰と話してるんだろう……?」


「……へぇ、インフルエンザね。流行ってるもんなぁ……。けど、たしか先月予防注射したって言ってなかったっけ?」
『(ギク)も、もしかしたら新型かもよ。まぁ普通の風邪かもしれないけどさ。とにかく、喉が痛くってさ。』
「一人暮らしってのは色々と不精になるもんだからな。たまには帰ってこいよ、母さんも心配してるぞ。」
『そ、そう……。でさ、あの、実はこの間バイクで事故っちゃって……。』
「バイク!へぇ、免許持ってるだなんて知らなかったよ。」
『い、言い忘れてたっけ?』
「おまえがまさかバイクに乗れるだなんて思わなかったからな。未だに自転車にも乗れないくせに。」
『(げげっ)じ、自転車とバイクは違うんだよ!色々と!』
「ふぅん、そういうものかい。で、事故ってのは?怪我でもしたのか?」
『いや、俺も相手も大したことはなかったんだけど……相手がなんか、弁償とか訴訟とかって騒いでてさ。』
「最近その手の詐欺が多いからなぁ。」
『(ぐげげっ!!)』
「案外、そのバイクを買った金が欲しくて言ってるだけじゃないだろうな、『早人』。お前は昔っから、そういう妙にこずるいというか、変なところで頭のまわる奴だったからなぁ。正直に言えば、バイク代くらい出してやるぞ。」
『(ほっ)や、やだなぁ親父、ンな訳ねぇだろ。信じてくれよ。』
「どうかな?その声は図星って感じだぞ。父さんにはわかるんだからな。ほら、お前が小学生のころにも、そんなことがあったろ。覚えてるか?ほら、アレだよ、アレ。」
『え……えーっと…なんだっけなー……。』
「ほら、覚えてないか?お前が私たちの寝室にビデオカメラなんか仕掛けてさ。本当に小学生か?って思ったものさ。結構大騒ぎしたのに、本当に覚えてないのか?」
『えー、そんな昔の話持ち出されても困るなぁ。』
「そうかい。…………………まぁ、もう『3ヶ月』も前の話だから、無理もないかな。」
『そうそう、もう3ヶ月も…………………………………え?』
「……ふふ……そうそう、『早人』。バイクが欲しいのなら、せめてランドセルを卒業してから言うんだな。」
『…………………………っ!』(ガチャンッ!!)


「ふぅ……。……ふふっ、ククククク……!」
「……僕、自転車くらい乗れるんだけど。パパ。」
「おや、早人(ころっ)。もう帰ってたのかい。」










[その3.ディアボロの場合]


「トリッシュ、今晩は外で食べようかと思っているんだが、何か希望はあるか?」
「え?珍しいわね、どうしたの?何かいいことでもあった?」
「なに、ちょっと臨時収入が入ってな。」
「ああ。…………ってことは、例の探索の仕事が成功したとか?」
「……………いや、それじゃない。
 実は今日、『オレ』と名乗る奴から電話があってな。」
「オレさん?変な名前ね、東洋系かしら?」
「さぁな。で、そいつが私用の移動中に事故を起こしたため、相手への示談金が必要だという旨を話し、私にそれを支払ってほしいと申し出た。」
「ふんふん。」
「電話を切った後、そいつの指定した口座番号を少しばかり調べてみた。すると、預金欄にあと少しで七桁に到達する程度の六桁の数字が書かれていた。
 そこでとりあえず、その口座にあった預金をすべてうちの口座に移動させたのちその口座を消滅させておいた。」
「ふーん…………ってええええ!?」
「しばらくその口座だけ残しておいて長期間収入を得続ける、という手も考えたのだが、痕跡が残りやすくなるしな。しかもあの手のは時間がたつとさっさと引き出されて別の口座に移されるし。それにしても、組織のボスという座は追われたものの、昔使っていたアクセスツールが残っていたのは本当に良かった、うむ。」
「え、ちょ、ちょっと待ってよ、だってそれ犯罪…………え?」
「……トリッシュよ、いい加減気づけ。
 我が家に普段から『俺』を一人称に使うやつはいない。」










[その4.プッチの場合]


とぅるるるるるるん、とぅるるるるるるるん……


「(ガチャ)はい、もしもし。」
『ああ、もしもし。俺だけどさ。』
「…………………ああ、もしかして、『DIO』かい?」
『そうそう、ディオだよ、親父。』
「はは、やだなぁ、親父だなんて。いつも通り『父さん』って呼んでおくれよ。」
『ああ、ごめんよ。今見てた映画に影響されちゃってさ、『父さん』。』



「(ふ……ふふふふ……!DIOが私に『父さん』って………DIOが私の息子って………ふふふふふふふふ……!!)」
『おーい電話の向こうのオレオレ詐欺さーん、今電波サイコ中年神父があんたの声使ってトンデモ妄想ワールド繰り広げてるから早く切った方がいいぞー……って、あーあ、スタンド使いでないから聞こえないか。可哀想に。』










[その5.DIOの場合]


とぅるるるるるるるん、とぅるるるるるるるるん……


「ああ、テレンス。よい、私がとる。(ガチャ)もしもし?」
『あ、もしもし?俺俺、俺だよ親父。』
「ああ、ドナテロか。どうかしたか?」
『(ちょろいな)いや、実はさぁ………。』
「あ、いや待て。最近そういう手口の詐欺が増えているそうだからな。本当にドナテロなのかどうか、簡単なクイズを出そう。」
『(げっ、ヤベェな……ボロが出ないうちにとっとと切ろうかな。)』
「ではゆくぞ。我が家で飼っているペットは何か。1番、犬。2番、猫。3番、鳥。」
『(って選択式かよ!!)』
「さぁ、どれだ?(バサッ、バサッ)」
『(お、ラッキー……今、羽根の音が聞こえたぜ。いや、ここは自然な感じで……)はいはい、3番だろ。これで信じたか?親父。』
「ブッブー。ハズレだ。」
『何ィィーーーーッ!?ちょっ、待てお…!』(ガチャン)
「ふぅ……。」


とぅるるるるるるん、とぅるるるるるるるん……


「…………む、また電話か?(カチャ)もしもし?」
『もも、もしもし父さん!?俺、俺!!あの、今さっきバイクが事故ってそのあの……!!』
「落ち着け。我が家で飼っているペットは何か。1番、犬。2番、猫。3番、鳥。(バササッ)さて、どれだ?」
『え?………ああ、そういえばそんなの決めたっけ。ええと、4番のヌケサク、でいいんだよな。』
「正解だ。そして、どうやら落ち着いたようだな、リキエル。で、バイクがどうしたって?」
『ああ、そうだった!いや、実はバイクが滑って転倒して、俺は無事だったんだけど偶然道を通りかかったヴェルサスが巻き添えになって、結構重傷なんで兄貴を呼んで欲しいんだけど。』
「何ィィィィィィィィィッ!?わかった、今ハルノを連れて行くッ!!(ガチャンッ!!)テレンス!今すぐハルノを呼べ!出かけるぞ!!」
「DIO様!まだ日中です!!」







おしまい



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 「電話を活用せよ」っていうか、駄目な活用法。詐欺ダメ絶対。
 ちなみにプッチ話の最後の台詞はホワイトスネイクです。

 振り込め詐欺、対策は大抵@架空の名前を言ってみるA家族にしかわからない問題を出すB引っかかったふりをして警察に届ける、てのがいいらしいです。
 この中で実践せず引っかかっちゃった(別の意味だけど)のはカーズ様だけ!それでいいのか究極生物!


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