寝言で君が呼ぶ名前、それは僕ではなく


5・ケロロ

「ふっゆきっどのー!お部屋のお掃除でありますよー・・・ゲロ?」

 部屋に飛び込んでみると、冬樹は眠っていた。机に突っ伏した状態で、読んでいた本が開きっぱなし。どうやら読書の最中の居眠りらしい。

「あれまー、冬樹殿らしくもない・・・。」

 ポテポテと歩み寄り、椅子、机と順番に登っていく。机の上にたどり着いてから本にしおりを挟んでパタンと閉じた。本のタイトルは『堀辰雄全集・第三巻』・・・・・・これは冬樹も寝るわけだ。恐らく読書感想文用かなにかだろう。

「ったくもう!本開きっぱなしじゃアトが付いちゃうじゃないの!冬樹殿ったら・・・・・・。」
「・・・・・・軍曹・・・・・・。」


 机から降りかけ、振り向いた。冬樹は寝ながら笑っている。よほど楽しい夢でも見ているかのように。

 不意に、どうしようもなく幸せな気持ちが沸き起こった。
 ここにいてよかった。
 ここにいられてよかった。
 そんなことを感じて。

 ケロロは手を伸ばし、冬樹の柔らかい髪を、そっと撫でた。





 そして。


 次の瞬間、ケロロ小隊四匹のカルテット・キックがケロロにクリティカルヒットした。









 壁にめり込んだケロロは二秒間ほどじたばたじたばたっ!としてからズボォッ!と頭を引き抜き、振り返った。そして、

「いきなり何すんの!」
「それはこちらのセリフだぁぁぁぁっ!貴様、今回のテーマわかってるのか!?何一人だけ名前呼ばれてんだ!」
「そうですよずるいですよぅ!僕のときなんてフッキー連呼した挙句脱臼ですよ!?」
「拙者のときは猪狩りだったのに!!」
「ッつか熊田って誰なんだよ結局!」
「えー・・・んな事言ったってぇ、冬樹殿が呼ぶ名前っつったら我輩以外ありえないって言うかぁ・・・・・・。」
「っこの仲良しコンビがぁぁぁぁぁっ!俺だって出来れば夏美とそのレベルまで行きたいわぁぁぁぁっ!」
「うわあぁぁぁん!軍曹さんずるいですぅぅぅぅっ!僕だって軍曹さんとラブラブになりたいですぅぅっ!!」
「待て待て待てぃ!2人ともなんか誤解してるけど我輩と冬樹殿はトモダチ!決してそーゆー怪しい関係と思われては・・・・・・。」
「いや!この際はっきり言うでござるが最近の冬樹氏と隊長殿はどう見ても友達以上・・・・。」
「熊田ー!!」





(ね・・・寝られない・・・というより起きられないよう・・・・。)


 蛙五匹大混乱の中、不幸な地球人が一人。











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