First Food Story
2.KURURU
まずは、状況を整理してみる。
現在、地球時間で午前8時25分。本来未成年、例えば目の前に座っているこの少年などは教育機関へ向かう義務のあるはずの時刻だが、当の本人はそんなこと気にするそぶりも見せずにニコニコ笑って俺を見ている。
今俺のいる場所は、この少年サブローの住んでいるアパートのキッチンそばのテーブル前の子供用椅子の上だ。因みにこの椅子は昨晩サブローが買ってきたものである。一瞬ナメとんのかワレ、と思ったのだが、この星の成体用のサイズの椅子では俺の身体に合わないことが判明した。
何故俺がこんなところにいるのかというと、昨日学校という場所で出会い意気投合したこのサブローが、小隊の他メンバーを見つける手伝いをするからウチに住め、と言ってきたからである。
当然俺サマはわざわざ手助けされなくとも隊員探しも侵略活動も一人で十分なのだが、まぁ拠点はないよりあった方がいいだろうと思い、誘いに乗ることにしたのだ。
昨日はそのまま家に帰り、サブローが椅子を買ってきて、その時一緒に買ってきたらしい食料(チェーン店の工場生産型っぽいパンやら牛丼やら)を食べて寝た。サブローは「どうせお前そんなにスペースとらないだろうから」としきりにベッドで一緒に寝ることを強要したが、俺はとりあえず電波でサブローをさくっと眠らせ毛布を引っ張り出して床で寝た。
今は、その次の日という事になる。
さて、話と視線と意識を目の前に戻す。といってもサブローに向けるのではなく、もう少し手前。
テーブルの上、自分の前に置かれた皿とさらにその上に乗った物体である。
それは、客観的な目から見れば一応ただのトーストであった。
恐らくオーブンではなくトースターで焼いたらしいそれは、パンの耳の辺りが少し焦げて黒くなっている。まあパン自体に食品として特に問題はなさそうだ。
しかしそのトーストに塗りたくられていたのは、ジャムでもバターでもマーガリンでもなかった。
マヨネーズ。
それも、山盛りであふれ出さんばかりの。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
視線を少し上にあげて、サブローを見た。
サブローの前にはそんな奇怪な物体はなく、代わりにカロリーメイ○が食べかけの状態で置いてある。
いまだニコニコしながらこっちを見てるサブローに、俺はそっと言った。
「・・・・・・・・・・・・・・何故、マヨネーズ?」
「え、だって黄色だし。」
「・・・・なんで俺とマヨネーズが黄色という媒体を得てテメーの中でイコールで繋がったのか80字以内で説明してみやがれ。」
「『黄色だし』かける16。で、ジャスト80字。」
俺はもう答えず、とりあえず無言で目の前の皿をひっくり返した。
べちゃ、といやな音がして、トーストとテーブルが一体化する。
「ああっ!なにするんだよクルル!せっかくマヨネーズチューブ一本使い切ったのに!」
「俺は真選組副局長か!?お前ちょっと頭開いて脳ミソの構造見せてみやがれ!」
バン!とテーブルをたたいて叫ぶが、サブローは悪びれた様子もなく、
「ちぇーっ。絶対OK出ると思ったんだけどな。悪ぃ、なんせ宇宙人と食事なんて初めてなもんだからさ。」
「例えどんな生命体が相手でも、普通こんなモンは出さねぇよ。」
「しょーがないな、別のモン作り直してくるわ。ちょっと待ってて。」
そう言って、サブローはマヨトーストを回収してキッチンに向かっていった。
待つこと数分。
「へいお待ち!」
そんな掛け声とともにサブローが差し出した皿には、なんとウニ寿司が乗っていた。
いや正確には、米を炊いて海苔で巻いて、上にある物と醤油を混ぜた物を上に乗せた、甘じょっぱい香りを放つ、ウニ寿司によく似た何か、が。
「大丈夫!ネタは新鮮だから!」
「プリンの鮮度の方は知らねぇが、話としてのネタの方はどう考えても期限切れだろ確実に。」
俺、なんでこんな奴とマブダチになっちまったんだろう・・・・・?
終
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ガンバだクルル。つうかごめんクルル。
まあとりあえず、電波コンビではあるけれどむっつんのほうが若干電波が強かったって事で。クルルって確かに嫌われてるけど、思考回路とか行動パターンとか結構理に適ってるし(金とか嫌がらせとか)。
その点むっつんは、自分にも他人にもあんまり意味の無い行動とか普通にとってそう。多分このマヨトーストやプリン寿司も蛙イジメとかからかいとかでなく本心でやってる感じ。
・・・・・タチ悪ぃな・・・・・・・・。
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