いつからだろうか
いつから。
私達は、こんな不安定な世界で暮らしていたのだろう?
幼い頃、あるアニメをよく観ていた。
ある時その話の中で、『世界中の人の、一番大切な人に対する気持ちが消える』という話があった。
その時自分に当てはめ、とても怖くなった。いま自分が冬樹君を好きだという気持ちがなくなるなんて、想像すら出来なかった。
そして今、そのことについて考えてみる。もしも今、私の周りにいる人たちの、大切な人に対する気持ちが消えてしまったら。
好きだという気持ちが、なくなってしまったら。
例えば、タマちゃんは今のようにケロロさんについてゆくことはなくなるだろう。尊敬もしなければ他の人に嫉妬もしない。お馬鹿な騒ぎにも付き合わない。タマちゃんは結構シビアな所もあるからその無能っぷりを本部に報告するかもしれない。
モアさんももうオジサマLOVEではなくなるのだから、手伝いをしに行くこともなくなるだろう。それどころかさっさと自分の仕事を完了させようとするはずだ。今まで地球を破壊しなかったのは、大好きなオジサマが彼女を止めていたからなのだから。
愛情だけではない。もしもケロロさんと冬樹君が友達じゃなくなれば、地球侵略を留めるものは何もない。ガンプラなどの障害はあっても、全面戦争や侵略の表面化はそれこそあっという間だろう。
ギロロさんの夏美さんへの想いがなくなれば、ギロロさんはあっさりと武力制圧に乗り出すに決まっている。彼にとっての大事な人、大切な人も、もともとは敵同士だ。今彼をそうさせずにここに繋ぎとめていたのは、彼女への恋心のみなのだ。
どれか一つの気持ちでも消えてしまえば。
私達を包むこの関係は、たちまち崩れてしまうだけ。
いつの間に私達はこんな、ぐらぐらと揺れる危うい世界の上に。
「つまり、現在この地球とこの関係を維持しているのは、愛なのですわね・・・・。」
「愛は地球を救うというわけですな。」
ポールがうんうんと頷いてくれる。私はテラスの手すりにもたれ、ため息を一つもらした。
「そう、愛は地球を救うのですわ。愛あってこその地球であり人であり、人は愛をはぐくむ事こそが生まれてきた意義であり、愛と恋とは似ているよーで微妙に違ってうんたらかんたら・・・・。」
「お嬢様、何かあったのですか?」
「私達はいつからかこんな不安定な愛の上で暮らしています。そして、それら一つでも欠けてしまえば、私達は生きてゆけない。」
私は呟く。そう、どれか一つの愛でも失われれば、地球はたちまち今の状態を失ってしまうだろう。戦争、侵略、破壊・・・・・どれをとっても、今よりよいものなど一つもない。
「それほどにも壮大な愛の物語・・・・・・・そこまではいいのです。
けれど・・・・・・。」
ふぅと息を吐き、空を見上げた。
見えるのは、地球を包み込んでいる大きな青。
「こんなに大切な恋愛たちなのに、友情以外一つも成就しないのは一体何故なのでしょう・・・・・・・・・・・?」
誰か一人でもうっかり諦めたりしたらどうしてくれるんですか。
心の中で運命の神様にそんな苦情を呟きつつ、私はUFO一つ見えない澄み切った空を、いつまでも眺めていた。
END
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最初の方で言ってる『世界中の人が一番好きな人への気持ちを忘れる』ってのはCCさくらから。でも最近なら植木プラスにも当てはまるなぁ。
ほんっとケロロの世界観ってあらゆる点から見て不安定だと思う。なのにもうアニメじゃそんな関係が5年も続いてるんだから不思議。
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