空が拒絶する






 『空』という字は、『から』とも読む。つまり、空はからっぽなのだ。

 からっぽなのに、何一つ不思議な事など含んでないのに、人は空を求める。自分達の頭上を覆う大空を自由に飛び回ってみたいと望む。
 だから人々は飛行機を作り、ロケットを作り、より高い場所を目指した。そして、空を突き抜けて宇宙にまで到達した。

 だというのに、人々は空を見上げる。今のあたしのように。

 青い青い空。ここではないどこかに繋がっているという点では海と同じだが、空には何もない。海のように謎を秘めているわけでも、生き物を包み込んでいるわけでもない。ただ、からっぽなだけ。

 それなのに人は皆、空を飛びたいと夢見る。
 そして、その願いは未だに果たされない。

 確かに人は機械を使って空を支配した。しかし、人間は今も自力で空を飛ぶ事は出来ない。
 今この瞬間あたしが地を蹴っても、大空へ浮かび上がることは不可能なのだ。

 足元に絡みつく全てのものから解放されて、ふわりと空を飛ぶことを、こんなにも人は望むのに、それが出来ない。


 何故。


 きっとそれは、空が拒絶するせい。
 人々が大空を鳥のように羽ばたく事を、空がよしとしないから。



 あたしがいくら空を求めても、空があたしを押し留めるから。
 だから、あたしは、飛べない。













「決して、知らない内にあたしの体重が3キロも増えてて重くなったから飛べないというわけじゃないのよ。」
「姉ちゃん、誰に言ってるのか分からない言い訳してるヒマがあるならダイエットしたら?」



 強い重力で大地に縛り付けられたまま空を見上げていたあたしは、弟の冷たい言葉を背中に浴びて、とりあえずギロロの特製おイモの誘惑を断ち切ることから始めようと涙ながらに決意した。










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