午後二時半。
既に会議が始まる時間だというのに、ケロロが来ない。
どうせケロロは日向家家事手伝いかお仕置きタイムなのであろうが、タママも、いつもキッチリ来るはずのギロロもいまだ姿が見えない。
よって、会議室(っつかケロロの部屋)には、久々に出席したドロロと珍しくラボから出てきたクルルのみが座っていた。
二人は、互いに互いを気にすることもなく好き勝手なことをしている。クルルはヘッドフォンから音漏れさせつつキーボードを叩いているし、ドロロはドロロでちゃぶ台の上に忍者道具を広げクナイを磨いている。
全員が全員マイペースなケロロ小隊だが、この二人はその際たるものだ。意識的か無意識的かの違いはあるものの、大抵まわりがどうであろうとある程度は常に自分のペースを貫いている。
時計の音だけが無常に響き、30分経過。
いつでもほとんど表情の読めない二人の頬に、一筋の汗。
扉はいまだ開く気配すらない。
やがて。
「あの。」
「おい。」
声が、重なった。
そのまま二人黙り込む。気まずい空気が流れたが、やがてクルルのほうが、
「……何か言えよ。用、あるんだろ。」
「あ、いや……特に拙者のは大した用では無いので、クルル曹長から…。」
「オレだって、別に…。」
そのまま二人、またしても沈黙。
(参ったでござる……話題が見つからない。共通の趣味もないし、最近あまり侵略作戦にも参加しなかったし……うう、気まずい……。)
(せめて隊長でもいればねぇ…。オッサンでもいいかな、ギャーギャーわめいてくれるし。何も考えてねぇタママでもいいや。モアとかもさっさと来いよ……。)
(そういえば、小隊結成されてからクルル君とちゃんと話した覚えが……あ、あれ?そもそも僕『クルル君』って呼んでいいの?一応上官だよね?)
(なーんかドロロ兵長って他のヤツと違って色々腹に一物ありそうなんだよなぁ…。なんも考えてねぇアイツら相手にする方が楽だし、今までなるたけノータッチで通してきてたんだが。)
(誰も来ないみたいだし、いっそ会議はお開きにしてさっさと巡回へ……いや、怒りを買ったら何をされるかわからぬでござる。とにかく相手が先に席を立ってさえくれれば……。)
(無言で出てくってのも、『礼儀に反する』とか言われそうだし、アサシンって気が短いって聞くしな。ここはとっとと相手がいなくなってくれるってのを祈るってのがベストかなー。)
(あう……でもその間ずーっとこの気まずい状態が続くのかなぁ?あっ、クルル君こっち見た!うわわわ、視線合わせないようにしてたのに!)
(げっ、目が合った。どーするよ、今そらしたらやっぱ斬られるか?どーするよ、どーするよオレ!ってライフカードかよ!)
見つめあうこと約2秒。
先に耐え切れなくなったのはクルルだった。
「……………その………………。」
「え……?」
「………228と220ってのは、それぞれの約数の和が互いの数になるっていう友愛数なんだと。」
「…あ……そう………。」
途切れる会話。この間約15秒。
(ってなんで友愛数なんだよオレぇぇぇぇぇぇっ!!!関連性何もねぇよ『博士の愛した数式』かよ!)
(あああああああ暗号!?暗号なの!?何の意味があるの!?)
内心の動揺を必死で隠したまま目を逸らす二人。気まずい空気はきっちり維持された。
小さなちゃぶ台をはさんで向かい合ったまま、二人は静かに冷めた茶をすすり、盆の中のせんべいに手を伸ばし………。
「「あ。」」
手が、触れた。
「って安い三流昼ドラかコラァァァァァァァァッ!!そのまま椿の花でもぼとっと落ちんのかムキャーッ!!」
「軍曹さん静かにぃ!今僕らが隠れてみてたってことバレたら本気であの二人に殺されるですぅ!ほら伍長、いいかげんそろそろ頃合いを見計らって中に……。」
「入れるかこんなとこぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
無論のことながら。
ドアの後ろに隠れた三匹に、青と黄色が気付くまであと1秒。
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