注:『東方Project』の「東方紅魔郷」のキャラクターが登場します。ゲームを知らない方、ネタバレを嫌う方は注意をお願いします。







幻想郷紅魔館、客間にて。





「たかだか100年少々……私の四分の一にも満たない程度しか生きていない若造が、『帝王』とはねぇ…。
 少しばかり名前負けしているのではないかしら?ねぇ、ディオ・ブランドー。」
「それはそちらにも言えることだろうがな……レミリア・スカーレット。
 『スカーレットデビル』『濃霧の吸血鬼』……。数多の異名を持つヴラド・ツェペシュの末裔が、一体どんな者かと思ってみれば……こんな幼い少女だったとは。」
「あら、外見というのはそんなにも人の強さを如実に表すものだったかしらね?私は人ではないけれど。
 それに、期待云々というなら、貴方だってそうでしょう。時を操るというから、咲夜と同等位の力は持っているかと思っていたのに、出来るのは『止める』だけだなんて。私と同じ種族を名乗るなら、最低限うちの従者程度の強さは持っておいてもらわないと、同族として恥ずかしいわ。」
「ほう?それはまるで、私より君の方が強いかのような言い方だな。
 確か、君の能力は………『運命を操る程度の能力』だったか。大層な言い回しだが、同時に曖昧な表現でもある。
 一口に運命といっても様々な形がある。我が息子も局地的ではあるが運命を変える能力を持つし、私の友人も進化の末運命を操作し固定する能力を得た。『運命を操作する』といっても、自身の運をほんのちょっぴり上昇させるだけの力か、それもと他者の行く末までも決定づけてしまう程の力なのか、それは使用してみなければわからない。
 『運命』という単語だけでは、君の強さの証明には成り得ないだろうな。」
「そこまで信じられないのなら……試してみる?今ここで、私の『運命』を。」
「ふ……楽しそうだが、やめておこう。今回ここへは侵略の為ではなく、家族旅行で来たのだからな。招かれた家主と争うのは無粋というものだろう。」
「特に招いた覚えは、私にはないんだけれど。
 まぁ、いいわ。この幻想卿に自力で入り、しかもただの人間を連れてこの紅魔館までたどり着いたという時点で、ある程度は貴方の強さの証明になっているでしょうしね。」(カチャリ)
「……………。(カチャ)……ふむ、いい紅茶だな。」
「当然よ。うちのメイドが淹れたものだからね。」
「ああ、館内で私にナイフを投げてきた者か。ふむ、忠義や実力だけでなく使用人としての能力もあるのか……なかなかいいな。私の館にも一人欲しいくらいだな。」
「あらスカウトする気?無駄よ、あの子私以外に仕える気ないから。」
「だろうな。見ればわかる。
 どうにも私の部下は、力か雑事かのどちらかにしか特化していなくてな……。」
「ふぅん。ちなみにそれは、同行してきた者のどれのことかしら。」
「いや、今日は配下は一人も連れてきていない。一緒に来たのは私の息子達と、息子ではないが親戚が一人だ。」
「あらそう。……てことは、実質貴方一人の力だけでここまでやって来たというのね。しかもこの雨の中。晴れているならまだしも、なかなか大したものじゃない。」
「………?いや、雨のほうが私にとっては都合がいいのだが。お前とてそうなのではないか?吸血鬼として。」
「え、だって雨の日って外出できないじゃない。」
「えっ。」
「えっ?」
「………………何か噛み合わんな。一応確認しておくが、貴様吸血鬼だよな。」
「と、当然でしょう。貴方のような途中参戦とは違って、純正たる生まれついての吸血鬼よ。」
「だよな……。ならば当然、日光は弱点なのだよな。」
「当たり前でしょう。日中の外出には日傘が欠かせないわ。でないと肌が焦げ……。」
「当たれば即死だよな、普通。」
「えっ。」
「えっ?」
「「………………………。」」









 その頃、大広間では。



「………………はい、もう結構です。ご協力ありがとうございます、咲夜さん。」
「はい。」(スッ)
「ど……どうだったんだ?兄貴。」(ドキドキドキ)
「大丈夫です。確認しましたが、星の痣はありませんでした。」
「っは〜………あーよかった。いや血縁の感覚ないから、十中八九そうだろうとは思ったけどさ。」
「あの技と能力見たら不安になるよな。あー、安心した。親父がまたヨソで子供作ってたわけじゃなくってよ。」
「でも、違うと分かるとむしろちょっと残念だよなぁぁ〜。一人くらい女の兄弟がいても良かった気がするぜ、オレ。しかも職業:メイドさんとか、かなりグッとくるじゃん。」
「まあ、ウンガロの気持ちもわかるけど……。」


ズズーン……。(ぴちゅーん)
ドゥン……。(ぴちゅーん)
ゴゴゴゴゴゴゴ……。(ぴちゅーん)


「………同じ妹キャラでも、あーいう鬼畜系は御免だけどな。」
「おー、やってるやってる。」
「土産物にあんなもの持ってきていいのかなと少し悩みましたが、喜んでもらえてよかったですね。」
「本当に、ありがとうございます。妹様はどうにも力の加減が苦手で、遊び相手もあまりいないものですから、ああした頑丈な玩具を頂けると妹様もお嬢様もお喜びになります。」
「まあ、あいつならいくら死んでもすり減らねーしな。」
「娘に無許可で持ってきてしまったので流石に本当に差し上げるわけにはいきませんが、滞在中はこちらへ置いていきますのでどうぞ遠慮なくお使いください。」
「ありがとうございます。ああ、妹様もあんなに楽しそうに遊ばれて……。」
「おー、すげぇなアレ。なんかでかい光が取り囲んでるよ。」
「おい、兄貴も見ろよ。ディアボロも結構避ける努力してるぜ?なんかカスりまくってる音するけど。」
「なんか叫んでるな。『ぐれいずー!』とか聞こえるけど。」
「いやー、楽しそうに戯れちゃって。彼も幼女がトラウマになってたそうですから、克服できそうでよかったですねー。」
「悪化すんじゃね?」


(ガチャ)「あのー、ブランド―ご一行様ー?お連れ様が回復されましたよー。」
「ああ、美鈴さん。ありがとうございます。」
「お、ディエゴやっと起きたか。」
「まさかこの紅魔館にトカゲが運び込まれる日が来ようとは……。一体どうされたんですか?変化系の妖怪にでも襲われたとか……。」
「いえ……実は、ここに来る途中の湖を通った際に、氷の妖精に襲われまして……。」
「え、まさか、チルノにやられたんですか?」
「……あの男……この紅魔館に辿り着き、私や美鈴を破ったほどの者が、あのH相手に苦戦を……?いや、あれでも2面ボスだし、妖精とはいえ人間相手には脅威なのかも………でも確かあの男もお嬢様と同じく吸血鬼と言っていたはず……。」
「いやそのー、辺り一面凍らされたせいで、ちょっとその、彼一人が冬眠状態になっちゃって。」
「……………はぁ……?」
「能力の副作用というか、体質みたいなものですので気にしないでください。」
「博士とかいうのに操られてた頃は雪の中でも動けたらしいのになー。」
「……通りで、パチュリー様が火の魔法を使って温めていたわけですね……。」





ガチャッ。


「あ、父さん!」
「おお、お前たち。遅くなってすまなかったな。」
「お嬢様。お話はお済みになられましたか。」
「ええ。なかなか興味深い話ができたわ。」
「同じ吸血鬼で体質がこれほど違うとはな……。やはり、吸血鬼としての成り立ちも関係あるのだろうか。」
「そうかもしれないわね。元々聖書や十字架なんて、クリスチャンが吸血鬼になった際に罪悪感でおびえるという程度の弱点らしいし。」
「お、ディエゴも蘇生したか。では、一旦博麗神社とやらに向かうとするか。
 今レミリアから聞いたが、この幻想卿に来たならば早いうちにそこの巫女に挨拶しておいた方がいいらしい。」
「そうよ。下手に無許可で動いて万一異変とでも思われたら問答無用で退治されるわよ。特に霊夢は人の話を聞かないから。」
「賽銭を持っていけば襲われない、というのは本当なんだな?」
「物品でもいいとおもうけど。万年閑古鳥だから。」
「よし、では行ってくるとするか。ほらディエゴ、しっかり起きろ。」
「KUAAA……。」
「それではレミリア。今日はなかなか楽しかった。また来よう。次は君の運命を見に、な。」
「ええ。その時には、貴方の強さとやらも見せてもらうわよ。」
























「あー、やっぱ来てよかったよなぁぁ〜!何せメイドに妖精にチャイナに巫女だろぉ?ジャパニーズサブカルチャーの夢がどんだけ詰まってんだよ!って状態だよな。
 これであとディズニーの姫的なやつとかもいたら最強だよなぁ〜。」
「どんだけ食いついてんだよ、ウンガロ。」
「さっきパチュリーさんに聞きましたが、竹林の方には月の姫もいるそうですよ。西洋風ではないようですが。あと、これから行く神社にはよく魔女が来るとか。」
「マジでか!すげぇな異世界!どんだけ各方面取り揃えてんだよ!」
「これテレンスとか来てたら発狂したんじゃねーかァ?」
「しかも、さっきの子も父さんと同じ吸血鬼だってのにすごい小さくて可愛かったしなー。なあ、父さん?あれで父さんより年上なんだろ?」
「ああ。やはり一口に吸血鬼といってもこちらとあちらでは大分違いも多いらしい。体質や成長の度合いもそうだな。石仮面は老人を若者に変えるなど肉体の強化に秀でているし、一度なれば成長もしないからな。」
「てことは、子供とかに石仮面つかったら急成長したりすんのかな。」
「ヴェルサス、不用意な事言わないでください。父さんが興味持って人体実験したらどうするんですか。」
「まあ、なかなかに実りの多い時間だった。相手も長く生きているだけあって非常に聡明だったしな。……レミリア・スカーレット………『永遠に紅き幼き月』、か………。
 ………………流石に、幼さも永遠ということはないと思うが……今の歳であの外見ということは、盛りになるまで最低もう500年か……長いな。いや、どの道私の場合死にさえしなければ時間は関係ないし……。」
「……親父?何の話?」










「お疲れ様です、お嬢様。いかがでしたか、元人間の吸血鬼というのは。」
「ええ、期待以上に面白い男だったわ。吸血鬼というよりは、人間の亜種という方が近かったけど。
 脳への刺激によって人間以上の力を引き出し、他者の生命エネルギーを奪うことでより強い肉体を得る……。まったく、人間は面白いことを考えつくわ。」
「ジョルノ……さっきの彼の息子によると、製作者は別に人間じゃないそうだけどね。」
「あら、そうなの。パチェ、珍しく客人と話しこんだのね。」
「あなたほどじゃないけどね。彼もなかなか知識が豊富で、話していて退屈しなかったわ。」
「頭が回るのは親子共通かもね。ディオの方も、持っている能力自体は咲夜の劣化版なのに、結局咲夜にも美鈴にも押し勝ったみたいだし。」
「………申し訳ございません。」
「いいわよ。それだけ相手も実力があったということだわ。
 折角だから私も遊んでみたかったけど、これ以上やると館にも深刻な被害が出そうだったしね。ただでさえフランが遊びっぱなしのようだし。」
「おねーさまー!(ずるずる)見てみて、もらったのー!すごいのよ、このまだらの子、何回肉片になっても戻ってくるのよ!?」
「よかったですね、妹様。」
「……吸血鬼の回復力とも違う……一度完全に死んだ上で蘇るあたり、むしろ月人に近いのかしら。興味深いわね。ちょっと図書館で調べてみましょうか。」
「なに?パチュリーも遊ぶ?いいよ、貸してあげる!」
「ふぅ……それにしても、外の世界にもあんな吸血鬼がいたなんてね……。ディオ・ブランドー……。
 …………ねぇ、咲夜?」
「なんでしょうか、お嬢様。」
「………………………その、マッチョで元人間で4人の子持ちで、その上自分より4回り以上も年下の男性って、異性としてはどうなのかしら……?」
「……………お嬢様?」




End



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 まさかのDIOレミEND。


 巷ではDIO様と咲夜さんの親子設定が主流だろうに、相も変わらずマイナー組み合せ好きで申し訳ない。だって吸血鬼同士ってイイなと思ったんだよう…!

 東方は公式の設定や情報が控えめなので、台詞書くときは大分二次創作に頼りました。それでも大変だった……。
 50000HITオーバー誠にありがとうございますっ!突然他ジャンルとのクロスオーバーとか無謀にもほどがありますが、よろしければお持ち帰りください。


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