7 秘事始(ひめはじめ)
例えば。
例えばその笑顔がいつまでも続けばいいと祈っている事も。
例えばその涙が早く止まるように願っている事も。
例えばその瞳にいつも強い光を宿していてほしいと望んでいる事も。
例えばあまり無理をしてほしくないと考えている事も。
例えばいきいきと身体を動かしているのを見て、その素晴らしい身体能力に賞賛を送りたいと思っている事も。
例えば疲れた顔で台所に立つのを見て、調子が悪いのではないかと心配している事も。
例えばベルトに入れた写真を眺めては、今何をしているのだろうと思いをはせている事も。
例えば夜更けに部屋の灯りがついていることに気付き、またあのラジオを聴いているのかと考え少しイライラしている事も。
例えばあまりあの男の事で悩んで欲しくないと感じている事も。
例えばたまに夕飯に誘ってくれるその優しい声を実は待ち望んでいる事も。
例えば友人と称する少女に引っ付かれているところを目撃して気をもんでいる事も。
例えば自分ではあまり食べない芋をお前のために焼いている事も。
例えばお前といつか戦わなければいけないという事を、本当は恐れている事も。
例えばお前を傷つけるかもしれないことを、本当は嫌だと思っている事も。
例えばお前のことを考えるたびに『敵』という立場を忘れそうになる事も。
例えば、お前のすべてを全身全霊かけて守ると誓った事も。
例えば。
「ギロロ、あけましておめでとう。今年もよろしくね。」
例えば、こう言って微笑みかけてくれる事に対して、抑えきれないほどの喜びを感じていることも。
きっと俺は、決して言葉にはしないのだろう。
「ふん、何がよろしくだ。俺たちは侵略者だぞ?貴様らペコポン人と、今年もよろしくするつもりなどないな。」
「なによそれー。まったく、アンタってホントそーゆー奴よねー。」
少しほおを膨らませる彼女を見て、怒らせてしまったかとやきもきする。
しかし、表面には絶対に出さない。
ああ。
今年もまた。
この恋は、まだ秘め事のまま。
「・・・てな感じのムービーが伍長の脳内覗いたら発見されたんで、ちょいとコピーして持ってきたぜぇ・・・・・。」
「うっわー、ギロロこれ絶対ポエマーの資質あるでありますなー。」
「前から大鑑巨砲主義とか言ってましたもんですねぇ〜。」
「貴様らーっ!」
おしまい。
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ギロロの私なりのハードボイルド。確かにギロロって周囲にはモロバレだけど、本人にはかなり隠してるんですね。
心の中であろうと『好き』とか『愛してる』なんて言えないようですし。
もしかしたら伝える気なんかないのかもしれませんが、それでも本文には『まだ』という言葉で締めくくらせていただきました。
・・・・それにしてもクルルがいると、プライバシーなんて塵ほどもありませんな。
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