099: 萌えろ。





 本日のケロロ小隊作戦会議にて。




「‥‥とりあえず、幼馴染は鉄板だよね。」


  シィ〜〜‥‥‥ン‥‥


「‥‥ちょっと、アリガチすぎませんかぁ?
 『子供の頃一緒に遊んでて淡い思いを抱いていた幼馴染の女の子と、大人になってから偶然再会する』なんて展開、ベタを通り越して前時代の遺物ですぅ。」
「なにおうっ!?古くたってイイものはイイから残るんでありますよっ!
 ったく最近の若いモンはこれだから、目先の新しさにばっかり飛びついて‥‥そんなんだからメディアに踊らされるんでありますよ!」
「ク〜ックックックックック‥‥‥これだからオッサン世代は‥‥。」
「ボクはやっぱり、オフィスラブものがいいと思うですぅ〜!特に上司と部下とか、ベテランと新人とか色々立場に差があって、その壁を乗り越えて危険な関係にひた走るってのが激しく燃え上がるですぅ〜!!」
「はーい!モアも、おじさまとタマちゃんに賛成です!てゆーか八方美人?
 モア的には、小さいころ憧れていた年上の男性と同じ職場で働けることになって、年の差や子供扱い等の障害にもめげずにひたむきにお慕いする女の子なんて、すごく共感できると思います!てゆーか以心伝心?」
「うだらァァァ〜〜ッ!!おめーに同意されても嬉しかねーんだよこの腹黒女がぁ〜〜ッ!!ドサクサにまぎれてアピッてんじゃねェぞゴラァァァ〜〜〜ッ!!」
「あー、モア殿‥‥。申し訳ないんでありますが、今日の会議は男だけで語り合いたいと思ってるんで、モア殿には悪いけど今日はちょっと御退室していただくっつーことで‥‥‥。」
「えぇ〜っ?てゆーか一発退場?」


パタム。


「‥‥さて、ンじゃ次は、モア殿もいなくなって話しやすくなったと思うので、クルル曹長。」
「‥‥‥‥‥何スかそれ。」
「とぼけんな。ギロロほどではないがお前の心は小隊内に大体筒抜けであります。わかったらほれ、早く。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥タママのオフィスラブ案には賛成。元々一人しかいなかった極小部署に配属されてきた新人OLとその先輩。残業時は勿論のこと仕事の時は大概職場に二人きり状態。
 居眠りしてる寝顔を起こさず眺めたり、たまたま遅刻して行ったら『今日は私の方が早かったですね!』って楽しそうに言われたり、他の部署の奴も来る公の会議でコーヒー出されて俺一人だけそいつから砂糖いくつ入れるか尋ねられなかったり、そーゆーオプション付きで。」
「うわ!開き直ったとたんになんてあからさまな!しかもマニアックなようでベタ全開ですぅ!!」
「おのれ‥‥大事な預かりっ子に手は出させんでありますよ。
 んで、期待はしてないけどギロロは?」
「そっ‥‥‥!‥‥その、最初は敵同士というか、互いに嫌い合っている関係だったのが、ぶつかりあったり共闘したりするうちに徐々に距離が縮まり、肩を並べたり背中を預けられる関係になっていく‥‥なんて展開も、悪くはないんじゃ‥‥‥。」
「はいはい、赤ダルマ乙。」
「予想はしてたけど願望入りまくりですぅ〜。」
「お前が言うな。」
「オマエモナー。」




    〜20分経過〜



「ちゅーかさぁ、ガキ大将と優等生の組合せってそんなに変?マイナー?
 一歩大人になって『不良と優等生』なら世間的にもメジャーじゃん、成就率120%じゃん。それが何で対象年齢下がっただけでひ弱なダメっ子のび太にとって代わられるの?おかしいじゃん。何なの、雨の日に公園で子犬でも拾えばよかったってワケ?」
「隊長、それ俺一度やった。」(アニメ第194話より)

「男同士だから何だって言うんですかぁ!時代は今、『男の娘』ですよ!!こんな可愛い子が女の子のはずがないってやつですぅ!!
 障害とか禁断とかタブーがあったほうが二人の愛がより強くなるってモンですぅ〜!!」

「‥‥こう、アレだな‥‥。普段男勝りで強気で好戦的だからこそ、時折見せる笑顔や弱気なところがより光って見えるというか‥‥‥ギャップ、というやつが、いいのかもしれん‥‥‥。あ、あくまで一般論としての話だが!!」
「あ〜‥‥‥確かに、ギャップは萌えの基本ッスね〜。意外な弱点(ストーン)とか、内緒の趣味(活断層)とか‥‥‥伍長にしてはいいポイントだぜぇ〜。さすが元祖ツンデレ。」
「誰がツンデレだ!!」
「あとは、『独占』‥‥自分にしか見せない顔、二人だけの秘密、なんてのも、萌え的にも好感度的にもアリなんじゃねぇの〜?」
「俺にしか、見せない‥‥‥。そうか‥‥‥芋を頬張る時のあの嬉しそうな顔、あれは俺だけが見る事の出来る、顔‥‥‥‥!!」(ポワーン)

「でもやっぱ、ライバルの存在は諸刃の剣ですぅ〜‥‥。そいつに負けたくない、って思って自分を高めることもできますけどぉ、好きな相手に更に別の好きな人が!ってのは、想うことに空しさすら感じてしまうですぅ〜。」
「ほほー、成程。つまり、『自分→相手←ライバル』なら戦えるけど、『自分→相手→別の人』ってなるとしんどい、ってことでありますな。
 確かに前者ならライバル蹴落とせばハッピーエンドっつー単純な構図になるけど、後者はむしろ敵はライバルよりも、他の人を見ていて振り向いてくれない意中の相手そのものっつー話になっちゃうもんね〜。」
「ッだがっ!惚れた相手を攻撃するなど‥‥‥!‥‥例えやったとしても、それでこちらを向いてくれるとも限らん!一体どうすれば‥‥‥!!」
「‥‥‥‥‥思うんスけど‥‥‥『憧れ』ってやつを、恋愛感情とみなさなければいいんじゃね?」
 そ  れ  だ  ! ! 
「ちょっ、ボクのこの溢れる思い全否定してくれてんじゃねぇよ黄色と赤ァァ〜〜〜〜ッ!!」

「あ、ところでさー、猫耳って若いコだけのもんじゃないでありますよな?ちょっと年いってても、似合うんなら別にアリだと思わない?」




    〜更に30分経過〜




「だーかーらーーッ!!っこう〜〜っ!小さい頃に『大きくなったらケッコンしよーね』とかって言っておもちゃの指輪(空き缶のプルトップでも可)とか贈って婚約の儀とかしちゃうわけよ!
 んで大人になって再会して、酒でも飲みながら昔の話に花咲かせていたら急に相手が『そういえばこんなことあったよね』ってその時の話持ち出してきて、やっべーって焦りつつも『まあ昔の話だし、子供のやることだしね〜』とか言って予防線張ろうとしたら、不意に相手がそんときの指輪(orプルトップ)をスッと取り出して、何もついてない左手を見せながら『あの時の約束って‥‥‥まだ、有効?』っていたずらっぽく笑って尋ねる‥‥‥‥みたいな、そういうシチュエーションを求めてるんでありますよ我輩はぁぁーーーーッ!!」
「隊長ちなみにそれ、現実リアルでは。」
「ないけどね!!ああ無いともさそんなフラグ!!
 婚約の儀とかンなあからさまなことできるくらい積極的な性格だったら今頃こんな年になるまで独身やってねぇっつーの!!わかって言ってんだろこん黄色ゴラァ!!」
「こう、こう!普段ヘッポコでダメダメで器が小さくて口ばっかりで頼りなくって、こんな人好きになるのボクくらいだろうなぁってしみじみ思うくらいダメな上司が、ボクが命の危機的なピンチになってもう駄目だっていうまさにその時さっそうと現れて、普段のダメっぷりはどこに置いてきたのってくらい格好良く鮮やかに活躍してボクを救出してくれるんですよぉ!
 そんでそんで、普段のアレは演技だったのかと尋ねるボクに対して『普段の方がフツーでありますよ。ただ、今回が特別だっただけ』って背を向けたまま言って、その後ボクの方を振り返って照れくさそうに笑って『お前のためだから‥‥‥ちょっとカッコいいとこ見せたかったから、だから頑張れたんだ』って言ってほーしーいーーーっ!!
 背景は夕焼けでもいいけどできれば夜明け!昇る朝日を背に逆光効果で更にカッコよさ倍増ですぅ!きゃー!きゃーー!」
「‥‥‥‥‥『お前が好きなのはアイツだろ。代用品は御免だぜ。』って言ってやったら、一瞬キョトンとして小首かしげて、その後普段と同じようににっこり笑って『あの人のことは確かに大好きで、尊敬してます!でも‥‥私が今隣にいたいのは、あなたです』‥‥‥‥‥‥‥なんてな。
 クッ、俺としたことが‥‥‥オッサンの病気でも移ったかな。」
「一度でいい‥‥‥一度でいいから‥‥‥っ!!
 顔を赤らめ、瞳にかすかに涙を浮かべて『‥‥‥この‥‥‥っ鈍感!!』と言われ、その意味を問い返す暇もなくあっという間に走り去られて茫然とその場に取り残されてみたいいいーーーーーっ!!!








「あ‥‥‥あのぉ‥‥‥‥‥。」
「ぜぇ、はぁ‥‥‥‥ん?どっドロロ!?お前、いつからいたんだ!?」
「今しがた‥‥‥来たところでござる‥‥‥。
 それで、本日の作戦会議は確か、『萌える』がテーマの‥‥‥‥。」
「あー、そうそう。こないだ伝えたとおり、今回の地球ペコポン侵略作戦のテーマはズヴァリ『萌える』であります。
 現在日本を中心に世界各国に広がっている『萌え』ブーム!そのエネルギーを逆手にとり、流行を利用して一気に侵略完了!!まずは手始めに地球人の心をがっしり掴む萌え系恋愛シュミレーションゲームを製作・販売し活動資金をガッポガッポであります!!
 んで、今そのゲームの設定とか、登場するヒロインとか、萌えるシチュエーションについて案を出し合っていたところでありますが‥‥‥‥‥ドロロはどうでありますか?」
「えっ‥‥‥そ、その‥‥‥‥。
 こ、今回の会議、拙者には少々荷が重いようでござる故‥‥‥‥‥然らば、御免ッ!!」

 シュタッ!

「あら〜、行っちゃったですぅ‥‥。ドロロ先輩ったら相変わらず、堅物というか真面目というか‥‥‥。」
「残念でありますなぁ。この空気ならドロロも高らかに『小雪殿は俺の嫁』とか宣言してくれるかと思ったのに。」
「確かに、超劇場版でのあの二人はマジ夫婦そのものッスからねぇ‥‥‥。」
「ま、しゃーないか。我輩達だけで進めるであります。
 んじゃ、一旦まとめると、ジャンルはオフィスラブ系で、登場女キャラは@再会した幼馴染、A女上司、B新人の後輩OL、Cライバル会社の営業の子、の4人でいいでありますな?」
「あっちょっ、軍曹さぁん!上司は女キャラじゃなくってえっとその‥‥‥‥!」































 その日の晩、小雪宅にて。



「‥‥‥『緑萌える初夏』とか、『若葉の萌える野山』とかの話では、なかったでござる‥‥‥‥っ!!」(ぺそぺそ)
「泣かないで、ドロロ‥‥。そんな日もあるよ。」






End



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 駄目だこの小隊、早く何とかしないと。(片思い的な意味で)

 好き勝手な妄想大変失礼いたしました。久々にカップリング色強いヤツ書いたなぁ。
 ケロロやクルルは大っぴらに思いを吐き出すタイプではないので苦労した(伍長は勢いさえあれば何とかなるタイプ)。後半のマニアックシチュエーション願望は、深夜打ち合わせのテンションみたいなもんだと思っていただきたい。

 そして超劇場版のドロロ&小雪については私の感想です。
 特に1と3がガチ夫婦すぎて辛い。それとアニメのジララ大尉の回でラスト寄り添う二人とか。



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