069: 愛について考察せよ。





「伍長・・・・・愛って、何でしょうねぇ。」
「・・・・・貴様はそれを俺に聞くか。」
「だぁって、一応片思いの第一人者じゃないですか、伍長って。」
「ほっとけっ!・・・・・・で、何があったんだ。」
「別に何ってワケじゃないんですけどぉ・・・・・たまに考えちゃうんですよ。
 たとえば、この前部屋に僕と軍曹さんがいて、軍曹さんがガンプラを作ってて、僕はそれを眺めてて。」
「日常的な光景だな。」
「はいぃ。で、軍曹さんのほうはありえないくらいガンプラの方に熱中してて、僕はそういうのを見てるうちにだんだん色々考えてたんですよ。
 たとえば、軍曹さんきっと僕がいること気づいてないだろうなぁ、とか、今ここで声かけたらきっとビックリするだろうなぁ、とか。」
「うんうん。」
「でもビックリするだけで、きっと僕が軍曹さんを見ていた理由とか意味とかは気付いてくれないんだろうなぁとか、それどころか声を掛けなかったらきっといつまでたっても僕の存在にすら気付いてくれないんだろうなぁとか、一体いつまで僕はこーやって憧れやら報われない想いやら嫉妬やらを抱えて生きてかなきゃいけないのかなぁとか、もしかしたら軍曹さんは一生こっちを振り返ってくれるつもりなんてないんじゃないのかなぁとか。」
「・・・・・・・・・なんかだんだん嫌な方向に流れてきたな。」
「で、そんなこと考えていてふっと意識を戻すと、目の前に軍曹さんの後ろ姿があって。」
「ああ。」



「それで、今もしこの人の無防備な首の骨をゴキャッと砕いたら、軍曹さんはもうずーっと僕のものになってくれるんだろうなぁって思って。」



「何をさらっと恐ろしいことを考えている貴様ァァァァァァァァッ!!」
「えー?そんなに恐ろしいですかぁ?」
「当たり前だっ!と言うか貴様、隊長だとか上司だとかそういったもの以前に・・・・・・好意を持つ相手に殺意を抱くと言うのはどう考えても異常だろう・・・・・。」
「そうですかぁ?伍長だってナッチーに一回くらい思ったことあるんじゃないですかぁ?『俺のものにならないであの電波男や忍者娘と一緒になるくらいなら、いっそ俺の手で』とか。」
「思うかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「こう・・・・今この愛しい人の首にそおっと手をかけて、ほんの少し横にずらしたり指に力をこめたりするだけで、もう軍曹さんは他の誰かを見ることもないしあの女とくっついたりすることもないし、一生僕の胸の中にだけにいてくれる存在になるんですよぉ。それってすっごい理想的だと思いませんかぁ?」
「・・・・・・・・・・・・思わん。」
「しかもほら、もしもそうやって止めをさす直前に軍曹さんが気付いて僕の方を見てくれたりしたら、軍曹さんの瞳が最期に映してくれたのは僕の姿だけってことになるんですよぉ。」
「・・・・・前々からどこかアブナイ奴だとは思っていたがここまでとは・・・・・・・・・はっ!そういえば、ケロロはどこに行った!さっきまで確か貴様と一緒に部屋に・・・・・・・・ああああああっ!!まさか貴様、貴様既にっ!?」
「やだなぁ、軍曹さんだったらちょっと前にナッチーに命令されてお庭に洗濯物干しに行ったですよぉ。」
「そ・・・・・そうか。それならいいんだが。」
「さっき、あと一センチで届くってとこまで手を伸ばした時にナッチーからのお呼びがかかっちゃったんですぅ。」
「間一髪かぁぁぁぁぁぁっ!!」
「毎回毎回あと少しってところで邪魔が入っちゃうんですよねぇ。最初の頃は僕自身やめとこっかなって思ってやめちゃってたんですけど、なんか何度も挑戦しているうちに抵抗感なくなってきて。」
「だれか!今すぐコイツを隔離しろ!というか今すぐ本部に送還してくれ!」
「ええー!?ひどいですよギロロ伍長、伍長だったらわかってくれるかもって思って相談したのにぃ!」
「わかりたくないわぁぁぁぁぁぁぁっ!」




「随分騒がしいが、何事でござるか?」
「おお、ドロロ!ちょうどよかった!」
「うわぁぁぁん、ドロロ兵長ぅぅぅぅぅ!伍長が、僕のこと本部に送還するって言うんですぅ!」
「おや、それはまた急な・・・・。何か問題でもあったのでござるか?」
「問題があるのはそいつの心だ。ドロロ、お前からも何か言ってやってくれ。タママの奴、ケロロが自分の方を見ないからと言って自分の手で殺そうなどと考えているんだ!」
「いいじゃないですかぁ!愛の形なんていろいろだし、相手のこと独占したいって思うのはごくごくフツーのことじゃないですかぁ!」
「だからその方法自体と実行しようという思考が普通でないと・・・・・ドロロ!呆れてないでお前もなんとか言え!」
「あ、ああ・・・・すまんでござる。ただ、呆れてたのではなく、少々・・・・・懐かしくて。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
「あのね、タママ君。聞いてくれるかな?」
「・・・・なんですかぁ?」




「僕も、昔はよく考えたんだよ。ケロロ君を殺してしまおうかって。」




「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」
「ほ、ホントですかぁ!?」
「無論。このようなことで嘘をついてもしょうがないでござる。」
「ま、待ってくれドロロ頼むから。それは・・・・・・一体、いつ頃の話だ?暗殺兵になってからか?」
「いやいや、幼年訓練所の頃でござるよ。暗殺兵になってからだったら、今頃この世に隊長殿は存在してないでござろう?」
「ござろうって・・・・・・そんな、当たり前みたいに・・・・・・・。」
「ほら、昔は随分ケロロ君も『ともだち』を連呼したでござろう?まあ今もだけど。で、昔の拙者も、かなり盲目的にそれを信じたものの、やはり疑いを抱いてしまう時もあったのでござるよ。」
「・・・・・・・・あったのか・・・・。」
「ケロロ君、昔から人に好かれたし、友人も大勢いたし、僕が休んでる間もいつも誰かと遊んでいたしね。それに対して僕は、ケロロ君とギロロ君しかなかった。で、ギロロ君は結構シビアなところもあったから、もしケロロ君が気を変えたらそのまま二人ともいなくなってしまうんじゃないかって、何度も思ったんだよ。
 だから、いつかいなくなってしまうくらいなら、いっそのことずっと胸の中にいてくれるようにしてしまえば、って思うようになって。」
「うっひゃぁ・・・・嫉妬に駆られた女の情念タイプですぅ・・・・。」
「お前が言えた義理じゃないと思うが・・・それにしてもドロロ、お前そんな風に俺を見てたのか・・・。」
「まぁ結局、あの頃の拙者にケロロ君を負かすだけの力はなかったため、単純に不可能と言う事であきらめていたのでござるがな。」
「ヘぇ〜・・・・・でも、僕のパワーだったら多分可能ですよぉ?」
「恐らくそうでござろうな。けれど、タママ君。実はこの計画は、非常に恐ろしいリスクを含んでいるのでござるよ。」
「え・・・・・・・・?」
「もしも相手を殺り終える直前に、その人が絞められた咽喉から別の人の名前を搾り出したりでもしたら、もうそれで拙者たちの永遠の敗北は決定してしまうのでござるよ。」
「あああああああっ!!そ、そこまでは考えてなかったですぅ!!確かに今の軍曹さんならいかにもフッキーとかそのあたりの名前を呟いて絶命しそうですぅ!」
「僕の時もギロロ君という巨大な壁があったからね・・・・。しかも、もしそのまま死なせてしまえばその先一生訂正させることはかなわぬし、どうにか相手を生かすことが出来たとしても、一度殺そうとしたのだから失った信頼を取り戻すのは至難の業。つまり、『いっそのこと』と相手を亡き者にしてしまうという行為は、一見全てを簡単に手に入れられるようで、全てを永遠に失うかもしれないという可能性を裏に潜めているのでござるよ。」
「さ・・・・流石はドロロ先輩ですぅ!僕、そんな恐ろしいこととは気付かず、危うく一生を棒に振るところでしたぁ!」
「生きていればやり直しもきく。けれど死んでしまえば、過ちは一生正されない。だから、タママ君。」
「はい。」
「もしやるのならば、完全に相手の心を自分のものにしてからにしようね。そうすれば他の名前を呟かれる危険性は減るし、心変わりを憂うこともなくなるのでござるから。」
「そっかぁ!ありがとうございました、ドロロ兵長!僕、頑張ってみます!」
「わかってくれて嬉しいでござるよ。」



「・・・・違う・・・・・・・俺がタママに言って欲しかったのは普通に説得であって、そんな打算ずくめな恐怖とか計画の延期の提案とかではないんだ・・・・・・。」



 負けるなギロロ伍長!
 ファイトだギロロ伍長!
 恐らく小隊内でマトモな愛の考え方を持つ奴はもう君1人だ!





End



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・・・・・・・・清純なドロロ&タママファンの皆様どうも申し訳ございません。深くお詫びいたします。
言い訳させてもらうと、たいていのサイト様でタママとドロロって結構マトモ係じゃないですか。それで、クルルがヘンな奴代表で、ケロロ、ギロロと降りていく感じ。(いや、サイト傾向というよりそれがオフィシャルなんですけど)
ただ、私昔っからの天邪鬼でございまして。
そのようなわけで、当サイトのタママ&ドロロはもっぱら黒担当、ギロロとクルルは地球人&アンゴル族の女の子相手にそこそこマトモな恋愛をしているという状態でございます。ケロロは微妙にヘンな奴側なんですが、ここにケロプルが絡んでくるとマトモ組という事で。

・・・・・・いやあの、マジすいません・・・・・。





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