049: 趣味に走れ。


注:VOCALOIDパロネタです。苦手な方ご注意。






「音楽ソフトを、買おうかと思っているんです。」
「音楽ソフトォ?」
「あの、機械が歌うやつです。ネットでよく話題になっている。」
「あぁー……あれね。
 ま、別にいいんじゃね?買いたきゃ。」
「兄貴がそういうのに興味持つってのも珍しいしなー。
 無料で配布してるソフトもあるらしいけど、そっちはやっぱ扱いにくいって聞くし。
 こういうのは売ってるやつの方が色々信用できるよな。」
「てか、むしろ兄貴がまだ買ってないってことのほうがオレは驚きだよ。どんなことも『買おうと思った時には、既にその行動は終わっているッ!!』てタイプだと思ったのに。」
「実は、どれにしようかまだ悩んでいるんですよ。機種というか、メーカーはもう決めたんですけど、その中にも型が色々あって。」
「ああ、ApendとかAct2とかって奴な。」
「そーゆーときゃ、単純に一番新しいヤツ選んどきゃいーんだよ。」
「ヴェルサス、ンな安直な。
 んで、その決めた商品ってのは何にしたんだぁ?やっぱ、女のヤツ?」
「いえ、『ディオロイド』です。」

「「「ああ………。」」」


「最新版の7型も一応考えたんですけど、一番人気があるのは3型なんですよね。それぞれ性能も大分異なるようだし…。」
「あー、確かにな。バージョンごとに歌の得意ジャンルも全然違ぇから、評判云々より何を歌わせたいかで選んでもいいけど。でもDIOロイドなら、とりあえず3型選んどけばまず間違いねーぜ?
 ……てか、俺、3型使ってるし。」
「え!ヴェルサス持ってたんですか?」
「まぁな。まだ投稿とかまではやってないけど、たまにカバーとかやらせてみる程度にはいじってる。」
「そうだったんですか。なんか意外だ…。で、どうですか?実際使っていて。」
「3はやっぱ、シャウトが売りだな。ロックとかメタルで映える声ってカンジか。声質もハリがあるし、抑揚やビブラートもつけやすいから、調教次第でぐっと人間っぽくなるしよォォ〜。」
「……オレ、その『調教』って言い方嫌いだなぁ〜。ネットじゃ定着してるけどよぉぉ〜。
 『調律』って言おうぜ?一応楽器なんだから。」
「確かに機械で楽器なんだけど、でも俺もつい『調教』って言っちゃうな。形が人間な分、余計に。」
「おや、リキエルも持っているんですか?一体どこのを?」
「俺もDioロイドだよ。型は7型。
 最新はやっぱり滑舌がいいよ。発音が鋭いって言うのかな。叫びもやらせりゃできるけど、俺はむしろバラードとか、歌声の美しさを生かす歌を歌わせるほうが好きだな。
 ただ、時々『くく』って喉鳴らすような音が入っちゃうことがあるけど。」
「なるほど……。
 この流れだと………ひょっとして、ウンガロも持っているんじゃないですか?」
「あ、バレた?
 オレは1型だよ、一番初期のヤツ。けど、初期っつっても捨てたもんじゃないぜ?音域が広いから歌わせ方によっちゃボーイソプラノから青年声まで出るし。
 あとは『語り』……歌う以外の、普通に喋らせるのも他より上手いしな。トークロイド、ってやつ?」
「ほぉ……。」
「ただ1型は『どんなイイ曲歌わせても薄っぺらで薄ら寒く聞こえる』ってんで、ディオロイドシリーズの中ではちょい評判悪めなんだけどな。
 でも、その分ダークな曲とかヤンデレ系ソングみたいなの歌わせるとすげぇぜ?冷たい感じがマッチしてさぁ〜。」
「ウンガロお前、そんなの歌わせてんのかww」
「そうですか……う〜ん、やはりどれも特色ありますね。迷うなぁ……。
 ……ところで、6型っていうのはどうなんでしょう?使っているっていう人の話をあまり聞かないんですけど。」
「あー、やめとけやめとけ。ありゃ、シリーズ中で一番影が薄い。」
「穏やかとかオールマイティとか言えば聞こえはいいけど、あんまり特徴がないんだよな。面白みがないっていうか。」
「つーか使いやすくしようとしたあまりディオロイドのよさまでなくなっちまった感じ?WRYもURYも言わねぇし。
 兄貴がどうしてもって言うなら止めないけど、オレはお勧めはしねーな。
 ま、それ以外なら1でも3でも7でもどれ買ってもハズレはねーよ。基本の声は皆同じ美声だし。
 オレは個人的に1を勧めるけどな。もし買ったらデュエットやろーぜ。」
「同じメーカーの同じモデルでデュエットやって何が楽しいんだよ、やるならせめて別モデルだろ。その点俺のは、どの型と合わせても聞き劣りしない自信があるぜ?」
「知ってるか?7型って、歴代で一番デュエットに適したモデルなんだぜ?ネットでも他の機種とコラボさせた動画が多いし。ウェカピポとかHPとか、マジェ・マジェとかさ。」
「リキエルそれ、コラボ相手を次々食いつぶしてるって聞いたんだが………まあ、いいか。
 ともかく、どれか決めて買ったら教えてくれよな、兄貴。」
「はい。……あ、あと、最後にもう一つだけ聞いてもいいですか?」
「何だよ。」

「ディオロイドシリーズってどれも人気が高いし、基本的に使っている人の評価もいいって聞いたんですけど……唯一の問題点が『マスターをマスターと思わず、基本言うことを聞かないで勝手に歌っている』ことだって聞いたんですけど……まさか、そんなことは……。」




「「「あ、それは本当。」」」

「…………致命的じゃないですか?それ。」



END



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 きっと神父は6型を使っている。

 仕事を選ぶどころか自分の好みの曲でなければ決して歌わず、調教やメロディにも文句を付けてくる。
 自分勝手で気まぐれで俺様で、マスターを下僕としか思っておらず、その上万一他のソフトなど買おうものならいびって嫌がらせして最終的にデータ破壊まで追い込んだ挙句「このDIO以外に目をくれようとするお前が悪いのだ」とプチヤンデレ宣言。
 そんなディオロイド。私も欲しい。