086: 奪え。
僕は今、父と向かい合っている。
普段ならば隣に立ち、共に笑い、「愛している」と言ってくれる父と、今僕は向い合って立っている。
これから僕は。
この人を、倒す。
何故、こんなことになってしまったんだろう。
今の僕の横には、僕と共に戦ってくれる仲間がいる。
正義を抱き、信念を持ってここにやってきた『星の痣』を持つ五人が、僕の左右に並んでいる。
一方、父さんの横にも、屈強な男達が並んでいる。
己の欲望に従い、多くの人間を踏みにじってきた、ドス黒い邪悪。これから僕らが倒さなければならない相手。
その中央に、僕の父さんは立っている。
どうして、こんなことをしなければならないのか。
たまらなくなり、唇をかみしめ、うつむく。
「………いずれ、こうなることは分かっていた。」
不意に、父さんが口を開いた。
驚き、僕は顔を上げる。僕の前に立つ父さんは、真っ直ぐに僕のことを見ていた。
「そうだろう?ハルノ。お前だって、気づいていたはずだ。
私は闇に住まう者。お前は光の道を歩む者。いつまでも同じ場所にいられないことくらい………理解していた。」
「……父さん………。」
「お前の正義は、私の存在を決して許しはしない。」
言い放つ。まるで、僕の迷いを断ち切ろうとするかのように。
「いつかお前と、敵対する時が来る………そんな事は分かっていた。
…だがな、ハルノ。それでも、私は諦めなどしない。」
「………?」
困惑する僕に対し、父さんはふっと軽く笑い、言った。
「お前は私の息子だ。
たとえお前の中にジョースターの血が流れているとしても、それと同様にお前の中には、確かに私と同じ『邪悪』の血も脈打っているのだ。
私はこの戦いで、それを証明してみせる。必ずやお前を、私が立つ闇の中へと引きずり込んでやる。たとえお前が望まなくとも、私をお前のもとへと連れ戻す。」
伸ばした人差し指をまっすぐに僕の方へ向け、父はそう宣言した。
宣戦布告。
口元にニヤリと笑みを称える父を見て、つい僕もつられるように笑がこぼれた。
そうだ。僕は、何を迷っていたのだろう。
「………僕の覚悟は、そう簡単には折れませんよ。」
「知っているとも。お前は私に似て、意志が強い。」
「なら、僕からも言わせてもらいます。」
「ほう?」
顔を上げ、正面から父さんの顔を見つめる。
僕は口を開いた。
「僕も、あなたに負けるつもりはありません。必ずやあなたを、僕と同じ光の下へとつれてくる。
あなたが嫌がろうと、抵抗しようと、そんな事は関係ありません。
あなたを、そんな奴等と同じ所へ行かせはしない。」
そうだ、負けるわけにはいかない。
倒すためではなく、また隣に立つ為にも。
僕の言葉に、父さんは目を閉じ、少しだけ寂しそうに笑った。
「……さすがは、私の子だな。それとも、ジョースターの一族だから、か。」
「どちらでもいいことです。僕は僕ですから。」
「フ………それもそうだな。」
お互い、覚悟は既に決まった。
もう迷いも、遠慮もいらない。ただ全てを掛けてぶつかり合うだけだ。
「………そろそろ始めるぞ。」
僕の横に立つ人が、学帽を深くかぶり直しながら言う。
僕は小さく頷き、その人の手をとった。
見れば、父さんも静かに下がって僕から距離を取り、隣に立つ神父の手をつかむ。反対の手は、僕が昔倒した組織のボスの方へと伸びる。
これから始まるのは、誇りの獲り合い。互いの尊厳と存在を賭けた、仲間の奪い合い。
そして、辺りに静寂が満ちる。
一瞬の緊張。
次の瞬間、先制の僕等6人は大きく呼吸を合わせ、最初の一歩を踏み出し、叫んだ。
「♪勝ーってうっれしーいはーないっちもーんめッ!!」
「♪負けーってくっやしーいはーないっちもーんめッ!!」
「殺人鬼っが欲っしいっ!」「紅一点が欲っしいっ!」
「お嬢さん……キレイな手、してますね……。ちょっと頬ずりしt」
「言わせねーよ!!」(ゴッ!!)
「ちょっと親父!あたしの対戦相手勝手に殴らないでよ!!」
「紳ー士ーが欲っしいー」「究極生物が欲っしいっ」
「山吹色の波紋疾走ッ!!」
「ぬぅぅッ!!奥義、輝彩滑刀ッ!!」
「ああッ!!刀と拳、チョキとグーでカーズの負けッ!!」
「なん……だと……!?」
「帝王(5部)ーがほっしいっ」「不良(4部)ーが欲っしいっ」
「アンタ……なかなかやるッスね…。その斑模様、自分で染めたんスか?」
「貴様こそ、よい整髪料を使っているな。初めて見たぞ、それほどまでに強固に固めた魂は…。」
「お前ら普通に戦えー!!」
「隣のジョジョさんちょいと来ておくれ♪」
「鬼ー(吸血鬼)が怖くて行っかれっない♪」
「石仮面ーかぶってちょいと来ておくれ♪」
「波紋ービリビリ行っかれーないー♪」
「神父ーが欲っしいー」「ギャングスターが欲っしいっ」
「兄貴頑張れぇぇぇーーッ!!!超頑張れ!いっそレクイエムでも可!!」
「神父がんばれー!父さんもファイトー!」
「外野ー!やかましいぞうっおとしいッ!!静かにしてろ!」
「うるせぇぇーーっこの中年学帽野郎!!オレら参加権さえもらえなかったんだしせめて応援くらいさせやがれぇ!」
「オラオラ(父)が欲っしいっ」「無駄無駄(父)が欲っしいっ」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」
「おおっ!!グーとグー同士、凄まじい『あいこ』の応酬!!」
「つーか他のも出せよ!」
「ジョジョーが欲っしいっ♪」
「ジョジョではわっからんっ♪(全員ジョジョだから)」
「主人公が欲っしいっ♪」
「主人公じゃわっからんっ♪(全員そうだから)」
そして……。
「ふふ………見事だ、ハルノ……。結局、残ったのは私だけか……。」
「父さん…。
…あなたはきっと、最後に僕を指名する。いや、そうしなければならない。この戦いに幕を引くのは、僕と父さんでなくてはならないからだ。
父さん。僕はかならず勝つ。この花いちもんめ……次で終わりです。」
「……たしかに、私は次にお前を勝負の相手に選ぶ。しかしそれは、勝負を終わらせるためではない。
憎きジョースター共を全員打ち倒す前に、まずハルノ、お前と二人手を繋ぎ声を合わせて花いちもんめを歌う!それが私の目的だ…。そしてお前と二人ならば、ジョースターどころかカーズやプッチを倒すことさえ容易い…。」
「そんなことはさせません。この年になって父親と二人で並んで手をつないで、あまつさえそれをこれほどの人に見られるだなんて、15歳の青少年として耐えられない。絶対に阻止します。」
「ふっ……それはお前の決めることではない。私が決めることだッ!!
ゆくぞッ!!ハッルノーが欲っしいッ!!」
「父ーさんーが欲っしいッ!!」
「WRYYYYYYYYYYYッ!!来るがいい、我が息子よッ!!」
「遊びは終わりですッ、父さんッ!!」
盛り上がる二人を見ながら。
「………ねぇ、親父。」
「どうした、徐倫。」
「……………………どうしてこうなった?」
「……そこんとこだが、俺にもようわからん。」
End
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ジョースターvsラスボスーズ、花いちもんめ大会。
誰か発案者呼んでこい。
せっかく「ラスボスvs主人公対抗戦で敵対する父子」などという素敵テーマを頂いたにもかかわらず、何故か花いちもんめになってしまいました。呑気だなこの奇妙な冒険。
「策士が欲しい」を入れられなかったのが心残りです。
さき様、32000HIT記念遅くなりましたがどうぞお受け取り下さい!
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