ネタバレの可能性もあるのでご注意を!
「トノサマン」(『蘇る』〜『2』)
「イトノコ刑事!!御剣が・・・・・書き置きを残して失踪したって本当ですか!?」
「成歩堂弁護士!来てくれたっスか!」
「来ないわけにはいきませんよ。それより・・・・・・一体、どういう事なんですか・・・・・?」
「っス・・・・紅茶を届けに来たボーイが、この封筒を発見したっス・・・・・・・・。自宅にも検事室にも姿はなく、ひょっとしたらアンタやもう一人の友人の所かと思って電話したんスが、あの矢張とかいう人にも心当たりないそうっス。」
「・・・・・・そう、ですか・・・・・・・・。」
「・・・・『検事御剣伶侍は死を選ぶ』・・・・・・・・・これは、やっぱり、遺書・・・・・・・・・なんスかね。」
「っ・・・・・・・!」
「一体どうして・・・・・理由が思いつかないッス!せっかくこの前の宝月検事の裁判のおかげで、黒い噂の誤解も解けてきたっていうのに!」
「・・・・・・多分、あいつ自身のプライドが・・・・・・。」
「それに社会的立場も高い方っスし、自分と違って給料もよくて安定してるし、ヒメサマンの放送も始まったし、今の検事は完全に人生勝ち組、自慢こそすれど絶望なんてするはずないっス!なのに!どうして!!」
「いや、だから、噂どうこうじゃなくてあいつ自身の勝ち負けの話で・・・・・・・・・・・・って、ヒメサマン?」
「そうっス!知らないっスか?この前終わったトノサマンの続編っス。」
「それは知ってますけど。ていうかその裁判僕もいましたから。そうじゃなくて、なんでここでヒメサマンの話が?」
「だって、トノサマンの放送が終わった直後の御剣検事なら自殺したって不自然じゃなかったっス。それぐらい落ち込んで仕事も手についてなくて、『日曜朝九時私は何を楽しみに起床すればよいのだ・・・・・・』とかも言ってたっス。
けどヒメサマンの放送が決定して、最初『続編は必ず前よりレベルが下がる』ってボヤいていた検事もどうやら気に入って、今ではちゃんと日曜の9時に目覚ましかけたりフィギュアのガチャポンのために財布ン中100円玉で一杯にしたり懸賞に応援する為に食事をお子様仕様(カレー、ソーセージ、ふりかけ等)にしたりしてたっス!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なのに一体どうして・・・・・・はっ!!まさか、サントラCDの初回特典『ヒメサマン&トノサマン夢の共演!ポスター』を手に入れそこなったから!?
それとも、六越デパートでやってたトノサマンショー、仕事空けてまで行く予定立てたのにいざ行ってみると冗談抜きで子供ばっかりで入るに入れずそのまま帰ってきたことが屈辱だったから!?
あとはそう、例の荷星さんの裁判で提出された証拠品『トノサマン、栄光の足跡』を何とかして手に入れようとして夜中こっそりカラーコピーしていたのを残業中だった自分に見つかったせいっスか!?
うわーんごめんなさいっス検事ー!でも証拠品の複製は違法っスーーー!」
「・・・・・・・・・トリアエズ、帰ッテクルノヲ待チマセンカ、イトノコ刑事。」
「そ、そうっスね・・・・・・。うん、やっぱり取り乱すのはマズいっスね!!自分、御剣検事のことを信じるっス!御剣検事なら、必ず帰ってきてくれるはずっス!その日まで、自分が御剣検事の仕事部屋の手入れをしとくっス!もーテーブルどころか自室のテレビにだってDVDレコーダーにだってチリ一粒たりとも積もらせないっスよ!!」
「・・・・・・あいつ、ちゃっかりヒメサマンの録画予約DVDでセットしやがって・・・・・・・帰ってくる気満々じゃないかよ・・・・・・!」
とりあえず、自分の中で御剣伶侍は死んだことにしようと決意した、成歩堂龍一25歳のある日であった。
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