ネタバレの可能性もあるのでご注意を!







「ケーキ」






「成歩堂弁護士って、チーズケーキっぽいと思わねっスか?」

 という糸鋸刑事の言葉を聞いた瞬間御剣は、黄色くなってビニールテープに巻かれて皿の上にいる成歩堂と、それを一口で食べようとする糸鋸刑事を連想した。

「・・・・・・・・・少々、下げすぎたかなとは思っている。しかしいくら財政が逼迫しようとも、人肉料理に走ってはいかん、人として。少しなら貸すが。」
「違うわよ、伶侍。最近流行っているのよ、ケーキ占いっていうのが。」

 御剣の台詞に冥がすばやくフォローを入れる。

「ケーキ占い?」
「人物をケーキに見立てて性格や相性を占うのよ。動物占いとかと同じね。」
「本当は占う専用の本があるんスけど、そんなものに頼らずともこーゆーのは人間の直感が一番信頼できるっスから!」
「要するに、本を買う金がなかったのだな。」

 ずばりと一刀両断してから、ふむ、と改めて考える。
 成歩堂龍一とチーズケーキ。確かに。

「特に華やかでもなく珍しくもなく、どこの店にも普通においてあって値段も普通かそれ以下なのに不思議と人気が続くところなどソックリだな。」
「しかも彼の場合、青いからブルーチーズかしら。」
「ムウ、それでは少し価値が上がってしまう。」
「・・・・・・・・・かわいそうっス・・・・・・。」

 同情する糸鋸。しかしすぐそんなことも忘れ(酷)、

「んじゃ、御剣検事はどっスかね?」
「伶侍は・・・・・・・・そうね、ティラミスかしら。苦くあろうとしているけれど、どこかでまだ甘さが捨てきれない。そんな所じゃない?」
「言ってくれるな。・・・・ふム、真宵クンであれば少々和風に抹茶のパウンドケーキ、春美クンなら小さめのフルーツタルト、といったところか。冥ならばワッフルか、ジンジャーケーキ・・・・・・」
「ゴドー検事ならやっぱり、コーヒーゼリーっスかね!」
「ケーキじゃないわよ、それ。まあ似合うけど。」
「綾里弁護士ならば、チョコムースなど似合うだろうな。」
「おおお!大人の響きっス!じゃあ、亜内検事なんかはどっスか?」
「ロールケーキね。」
「うム、程よく地味だな。」
「あっ、じ、自分は!?自分は何が似合うっスか!?」
「ム・・・・そうだなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クリームを入れ損ねたシュークリーム?」
「しかも焼き加減を失敗して膨らまなかったやつね。」
「・・・・・・・・自分そんな硬いクッキーみたいになったやつはイヤっス・・・・・・・・。」
「いやに具体的だな。作ったことあるのか?」


 などと一通りケーキトークに花を咲かせた、そんな時。


「どーもー!遊びに来ましたー!」
「こらこら、堂々と言うなよ。一応弁護士と検事なんだから。あ、これお土産。近くに新しい店が出来てさ。」
「あ!ケーキっス!ナイスタイミングっス!」
「おひげの刑事さんは、ケーキがお好きなのですか?」
「いやいや、勿論好きっスけど、今ちょうどケーキの話をしてたんス!」
「それにしても・・・・・・・箱からして、随分と大量に買ってきたのだな。」
「えへ〜、だってやっぱり一通り試したいじゃないですか。」
「とか言って、支払いは結局僕持ちなんだからなぁ・・・・・。よく考えたら、ここにいる人だけじゃこんなに食べきれないぞ。」
「大丈夫!余ったら責任持ってあたしが平らげるから。」
「そういう問題じゃないだろ・・・・・。」


 そう言いながら成歩堂が、机の上に箱を置く。
 箱を空け、中身を見た御剣、糸鋸、冥の第一声は。





「「「あ、法廷。」」」




 茶色い箱の中には、右側にコーヒーゼリーとティラミスとワッフルとシュークリームとロールケーキ、左側にチーズケーキと抹茶パウンドとタルトとチョコムースが見事に行儀よく向かい合っていた。















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