07 独りになった時、その怖さを知る



 もう残っているのは自分一人だ。

 そう確信した瞬間、それは幸運でも何でもなく、ただの恐怖だと分かった。






 自分一人。
 ただ一人。
 最後の一人。
 自分、一人。

 それはつまり、次に捕まるのは自分だということだ。


 先程までは、他の誰かが捕まるかも知れないと思えた。
 ひょっとしたら、自分が捕まらずにすむかも知れないと思えた。
 けれど。
 もう、残っているのは自分ただ一人なのだ。

 もう、期待は出来ない。
 もう、逃れられない。
 もう。

 助からない。








 ガタリ、と扉が開いた。


 びくっと身を竦ませ、ダカスコスは目を閉じた。
 逃れられない。逃れられない。
 そんなことわかっているけど。



 生きたかった。








「ダーカースーコースー?」

 ギーゼラ様の声だ。
 訓練から逃げ出したものを罰するための、鬼軍曹状態の声。
 悲鳴は、自分を除いた分だけ聞こえた。
 自分が、最後の一人。最後の悲鳴を上げる者。




 目を閉じ、耳を塞ぎ、しかしそれでも。
 肩に置かれた手の感触ははっきりしていた。


 死を覚悟したまま、ダカスコスは悲鳴を上げた。








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