TMM




 倒れたままの状態で、ふと桃華とポールの姿が見えた。

 爆風と煙のせいで自分の手足も見えないはずなのに。自分の視界すら、白く濁っているのに。
 なのに、桃華とポールが自分の方を見ているのがわかった気がした。


「セーンパーイ、ねー、センパイったらー。」

 タルルの声が聞こえ続ける。それは耳の中で響き、頭の中を埋め尽くしてしまいそうなほど大きくなってゆく。
 記憶の中のタルルと、今のタルルが重ならない。

 恐らくタルルは、自分が倒れたあと、今度は桃華たちに手を出すのだろう。
 自分の事を助けてくれて、今までずっと一緒に時を過ごしてきた大切な人たちを、タルルは躊躇いもなく傷つけるのだろう。
 今のタルルならそうする。きっと、今自分に向けて浮べている笑みを崩しもせずに桃華たちを攻撃する。



「タマちゃん!」

 桃華の声。自分のことを心配してくれている、優しい声。
 けれどその声は、タルルの声にかき消されてしまいそうなほど小さく、遠く聞こえる。



 桃華が弱い事を、タママは知っている。
 いつだって戦慄するほどのパワーをふるっている彼女だが、やはりまだ幼い少女なのだ。だからこそ、ポールも親衛隊も、いつだって桃華のことを守ってきた。
 ほんの少し前までは、タルルも同じく弱かったはずだった。
 けど、彼はもう違う。そんな気がする。
 表情一つ変えることなく敵を消すことの出来る顔になってしまった。

 桃華はそうじゃない。
 いくらパワーがあろうと、彼女は弱く、脆い。




 だから自分が、彼女を守らなくちゃいけないのに。

 なのに。




 守らなくちゃいけないのに。
 助けなくちゃいけないのに。
 救わなくちゃいけないのに。

 どうして身体が動かない?
 どうして視界がこんなに歪む?
 どうして、聞こえる音が遠くなってゆく?




「なーんだ、もうノビちゃったんスか。なら良かった。あんまり気を使わなくて済んだッス。」

 悔しいのに。
 タルルの言葉を止めさせてやりたいのに。

 彼女を、守りたいのに。 








 怒りも悔しさも、願いすらも呑み込んで、タママの意識は闇へと沈んでいく。









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 ポールが消えていく様があまりにリアルで驚いたことを覚えています。あとは、助っ人のスーパー虫があまりに巨大だった事とか。くだらないところばっか見てるな、自分。
 桃華とタママ。似た者同士と思ってる方が多いですが、私は結構違うと思ってます。どうしても、『男の子』と『女の子』ですから。
 可愛い外見ですけどタママも男ですから、女である桃華を守ってあげたいと思うのは当然でしょう。もちろんこの二人もラブとは違う方向で。



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